35年前のレトロゲーム、とんでもない壊れ方に「初めて見た…」と驚きの声 CDのプロは「経年劣化ではない」と分析

35年前のゲームソフトを優しく磨いていたところ、割れてしまったハプニングが話題に。専門家は「保管環境の悪さ」を推測している。

2026/10/27 10:30

■そもそも「CD」ってどんなメディア?

まず、前提として「CD」とはどのような記録媒体なのだろうか。

こちらについて、磁気研究所の担当者は「CDは直径12cm、厚さ約1.2mmのポリカーボネート樹脂を主体とした光ディスクです。音楽やデータを『0と1』のデジタル情報として記録し、レーザー光を当てたときの反射の違いを読み取って再生します」と、説明する。

磁気研究所
画像提供:磁気研究所

一般に「CD」と呼ばれるものには大きく分けて、工場で情報をあらかじめ記録して製造するCD-ROMや音楽CDと、利用者が後から書き込むCD-Rの2種類が存在するという。

それぞれの違いについては、「CD-ROMや市販の音楽CDでは、製造時に非常に細かな凹凸(ピット)を樹脂面に形成し、その上にアルミニウムなどの反射膜を設けており、プレーヤーはレーザー光の反射状態の変化からデジタル信号を読み取ります」「一方でCD-Rは少し異なって、樹脂基板の上に有機色素の記録層があり、書き込み時にレーザーを照射して色素の性質を局所的に変化させます。その変化によって反射率に差を作り、市販CDの凹凸と同じようにデジタル情報として読み取れるようにしています」と、説明してくれた。

ちなみにCD-Rの有機色素による記録技術は、日本の企業・太陽誘電で浜田恵美子氏らによって実用化された、当時としては非常に斬新な技術。

磁気研究所
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磁気研究所の担当者は「記録層に有機色素を用い、レーザー光によってその状態を変化させ、反射の違いとして情報を読み取るという発想です。この『有機材料を使う』というのは、当時の研究者から見れば、コロンブスの卵的な発想です。有機材料は無機材料に比べて変化しやすい材料で、誰も『これを記録材料に使う』という発想は持たなかったと言います。しかし塗布装置は大型設備が不要で、安価にCD-Rを作ることができたため、浜田さんの開発チームはCD-ROMとの完全互換を実現し、一時は年間100億枚のマーケットを生み出したのは大功績でした」と、その革新性を指摘している。

なお、担当者は浜田氏と面識があり、酒の場で「この技術によって、世界中の貧しい国の子どもたちにも音楽や映画を見たり聴いたりする機会が広がるのであれば嬉しい」という話題が上がったことが、記憶に残っているという。

そんなCD-Rの開発が発表されたのは、今から40年近く前の1988(昭和63)年のこと。

磁気研究所の担当者は「当時はまだ、デジタルコンテンツをインターネットで簡単に配信できる時代ではありませんでした。大量に複製でき、比較的安価で、しかも長時間の音楽や映像、データを運べる光ディスクは、情報や文化を広く届ける媒体として大きな可能性を持っていました。今振り返ると、CD-Rという技術は単に『データを書き込める便利なディスク』を作っただけではなく、情報や文化をより多くの人に届ける手段を低コストで実現した技術でもあったのだと思います」と、振り返っていた。

現代の我々がインターネットを利用する上で「当たり前」として享受しているサービスの礎が、この時誕生したと言えるだろう。


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■プロに「CDの保管方法」聞いた

さて、話を本題に戻したい。一概に「経年劣化」と言っても、そもそもCDに明確な「寿命」や「使用期限」は存在するのだろうか。

こちらの疑問に対し、磁気研究所の担当者は「CDに『何年経ったら必ず読み込めなくなる』という明確な使用期限があるわけではありません。CDの寿命は製造品質、材料、保管温度・湿度、光、汚れ、傷、取り扱い方などによって大きく変わります」と、回答する。

続けて「一般的に、CD-ROMや音楽用CDは良好に製造されて標準的な環境で保管された場合、おおむね50~100年程度という目安かと思います。一方、CD-Rは使用される色素や反射膜による差が大きく、数年から100年以上まで非常に幅があります。したがって『CDの寿命は何年』と一律に断定するのは適切ではありません」と、補足していた。

続いては、CDの寿命を長くするために必須となる「適切な保管環境」について尋ねてみる。

こちらについて、担当者は「基本的にCDは高温、多湿、直射日光、急激な温度変化を避け、ケースに入れて保管することをお勧めします」と回答。

また、汚れてしまったディスクのケアについては「まず柔らかい布などで無理にこすらず、埃であればエアダスターなどで除去する方法が安全です。拭く必要がある場合には、一般的には柔らかく清潔な布を使用し、円周方向にぐるぐる拭くのではなく、中心から外側へ放射状に拭く方が望ましいと考えられています」との回答が得られた。

磁気研究所
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今回物議を醸した「浴室用の中性洗剤をかなり薄めて使用する」という方法については、「必ずしも『直ちにCDを破損させる方法』とは言えませんが、積極的には推奨できません」と、複雑な表情を見せる。

その理由については「『中性である』ことだけでは、CDへの安全性を判断できないからです。浴室用洗剤には界面活性剤のほか、商品によって様々な添加成分が含まれています。CD用として材料適合性が保証されているわけではありません。また、CDの材料であるポリカーボネート樹脂は比較的吸湿性が低いほうですが、水分が残ると反りの原因にもなります」と、説明。

そうした実情を踏まえ、CDが「真っ二つに割れてしまった」ケースについて、「ポリカーボネート樹脂は、通常の使用条件では比較的丈夫な材料です。そのため、何も力を加えていないCDが、単純な経年劣化だけで突然真っ二つに割れるという現象は、一般的・典型的なCDの寿命現象ではまずないと思います。ただし保管環境が悪い場合、あるいは過去に落下や無理な力がかかってセンター穴にクラックが入っていたりすると、このような現象が現れるのではないかと思います」と、分析していた。


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■CDの作られた時期で「寿命の違い」はある?

このように、CDの寿命を左右するのは「適切な使用」と「適切な保管環境」、そして「適切なケア」と判明。

しかしCDの誕生から40年、CD-Rの誕生からは30年以上の月日が流れている。その間、改良によって製造されるCDの寿命に変化は生じていないのだろうか。

こちらの疑問に対し、磁気研究所の担当者は「難しいご質問です」と、困った表情を浮かべる。

この数十年で、CDの基本構造そのものが劇的に変わったわけではない。しかし一方で、材料選定や製造技術、品質管理についてはこの期間に改良が積み重ねられてきたという。

そうした背景を踏まえ、担当者は「CD-ROMや音楽CDは規格によって寸法や光学特性が決められているため、30年前のCDも現在のCDも、基本的には『ポリカーボネート基板+情報層+金属反射膜+保護層』という構造です。CD-Rについても、『ポリカーボネート基板+有機色素記録層+金属反射膜+保護層』という基本構造は変わっていません。一方で、良質な材料と製造品質が寿命に大きく関係します。そのため『新しいCDだから必ず30年前のCDより長持ちする』とは断言できません」と、コメントしていた。

記録媒体の変化は、そのまま科学技術の進歩の道筋である。

今回の取材に協力してくれた磁気研究所では、フロッピーディスク、MO、CD、DVD、メモリーカード、USBメモリー、SSDという媒体の大きな変化を見守り続けてきた。

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そうした立場から、担当者は「当社もその変化に合わせ、その時代に必要とされる記録製品を提供してきました。現在では、USBメモリー、SDカード、microSDカード、SSDなどのメモリー製品が記録メディア事業の中心となっており、今後も需要の拡大が続く分野だと考えています」と、コメントする。

一方で「フロッピーディスク、カセットテープ、MO、MD、光ディスクといった、いわゆるレガシーメディアについても、需要が完全に無くなったワケではありません。古い設備や機器を使い続けている企業、学校、官公庁、医療機関、放送・音響関係、個人のお客様など、今でも必要としている方がいらっしゃいます。当社では、こうした需要期を過ぎた製品についても、可能な限り調達・在庫を継続し、『必要とするお客様がいる限り応えていく』という考え方を大切にしています」と、過去に主流であった記録メディアにも寄り添う姿勢も示している。

情報化社会には「記録」が必要不可欠。そして言うまでもなく「記録」というのは過去のデータであり、現代に生きる我々にとって「過去=記録」とは、現在や未来と同じくらい重要な存在なのだ。

そうした事実を誰よりも実感しているであろう磁気研究所の担当者は、「新しい記録メディアだけではなく、古い記録メディアまで幅広く扱っていることは、40年以上に渡ってこの分野に携わってきた当社ならではの特徴だと考えています」と、自社の強みを語ってくれた。


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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。道路・鉄道ネタに関する取材で、国土交通省や都道府県警、全国の道路事務所、鉄道会社に太いパイプを持つ。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)

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