アラビックヤマトの「アラビック」って何?→メーカーが明かす由来に驚き 8割の人が「知らなかった」
アラビックヤマトの「アラビック」の由来を、8割の人が知らなかったと判明。ヤマト株式会社は「アラビアのり」が由来と説明する。

糊(のり)と聞くと、オレンジ色のキャップが特徴的な『アラビックヤマト』をすぐ連想する人は多いはず。では、アラビックヤマトの「アラビック」の由来をご存知だろうか。
今回、同製品の名前の由来をめぐり、衝撃の事実が明らかになったのだ。
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■「アラビック」は「アラビアのり」が由来?
Sirabee編集部では以前、全国の10〜60代の男女706名を対象としたアンケートにて、アラビックヤマトの名前の由来に関する調査を実施。
こちらは「アラビアのり」が由来だと思うか尋ねたところ、「思う」と回答した人は全体の21.8%であった。

約8割の人が「由来だと思わない」と回答したワケだが、じつは同製品の名前は「アラビアのり」が由来となっているのだ。
しかし「そもそもアラビアのりって何だよ!?」と疑問に感じた読者も多いことだろう。記者も同意見である。
そこで今回は、同社を代表する製品『アラビックヤマト』命名の経緯と誕生の歴史をめぐり、ヤマト株式会社に話を聞いてみることに。
■そもそも「アラビアのり」って何だ?
液状のり『アラビックヤマト』が発売されたのは、1975(昭和50)年。

開発の経緯について、ヤマトの担当者は「高度成長期の日本において女性の社会進出も進み、女性のおしゃれへの意識も高まる中で『事務作業で手先を汚したくない』という要望も増えていました。 そこで、手を汚さず滑らかな塗り味で均一に塗れて接着力も高い『アラビックヤマト』が開発されました」と、当時の時代背景を踏まえつつ振り返る。
その際に開発のヒントとなったのが、昭和30年代までアラビアゴムの樹液を主成分としていた液状のりの「アラビアのり」だと言う。
「アラビアのり」は明治末期にイギリスやドイツから輸入され、大正時代に国産品も作られるようになり、一部で普及。なお、接着成分のアラビアゴムは、アラビア産ではなく、アフリカの北部ないし西部に産するアカシア属植物の幹や枝から自然に分泌する粘液を固めたものだと言う。
ヤマトの担当者は「ヨーロッパへはアラビアを通じて輸入されていたので、『アラビア』の字がついています」と、補足してくれた。
また、アラビアのりの特徴については「容器のビンを逆さにすると、先端の海綿を通して液状のりが染み出し、手を汚さなくても糊がつけられる便利なものでした」とのこと。
これは正に、アラビックヤマトの使用法そのもの! …だが、アラビアのりには見逃せない弱点がいくつか存在したのだ。
前出のように手を汚さず塗れる点では優れていたが、高価であったことに加えて、海綿が固まってしまい糊がなかなか出てこないなどの欠点があり、大規模な普及には至らなかったという。
ヤマトの担当者はこうした事情を踏まえ、「そこで、この『アラビアのり』の使いやすさと、昭和30年頃普及してきた合成樹脂の糊の良さを合わせ、さらに『でんぷん糊のようなソフトタッチの滑らかな塗り味の新しい糊はできないだろうか?』と開発に取り組みました。当時は合成樹脂の糊もありましたが、塗り口はヘラ状ものが一般的でした」と、説明する。

つまり、アラビアのりと合成樹脂の糊の「良いとこ取り」を開発のテーマとし、手を汚さず滑らかに塗れる、奇跡の糊を目指したのだ。その結果、約3年もの歳月を経て開発されたのが、ご存知『アラビックヤマト』である。
■画期的な発明・特殊スポンジキャップ
同商品の最大の特長は「特殊スポンジキャップ」であり、担当者は「この商品で最も苦労した箇所と言えます」と、先人たちの努力を語る。

前出の通り、「手を汚さず、滑らかな塗り味で均一に塗れる」塗り口を目指したヤマトは、海綿の代わりとなる素材の選定に試行錯誤することとなる。
最終的に、素材はスポンジに決定。しかし困ったことに、糊の浸透性を良くするためスポンジを薄くすると、今度は強度に欠けるというジレンマが発生する。こちらのジレンマを、同社では「2枚の異素材を組み合わせる」ことで解決。
ヤマトの担当者は「また、スポンジだけではコシが無いため、『均一に塗るにはスポンジの下に、何らかの受け皿を入れたら良いのでは?』とも考えました。その時、家庭の台所にあったプラスチック製ザルの形状が目に留まり、改めてザルの構造を調べたところ、底の部分に力を加えても一定の強度を保ち、適度な弾力がありました。そしてついに、受け皿となる『ザル形状のプラスチック』とスポンジを組み合わせることで、手を汚さず、滑らかな塗り味で均一に塗れる塗り口の『特殊スポンジキャップ』が完成したのです」と、開発の経緯を語ってくれた。

余談だが、記者にはこちらの特殊スポンジキャップに、幼少期ならではの苦い思い出が存在する。
あれはまだ、糊と言えば幼稚園のお道具箱に入っている「でんぷん糊」を使用していた年齢の頃で、当時の記者にとって糊と言えば「ヘラで大量にすくって画用紙にベタベタ貼り付ける」存在であった。
そんなわんぱく小僧は初めて『アラビックヤマト』を使用した際、糊の出に物足りなさを感じてしまう(今思うと、至って適量なのだが…)。そこで中に入っている糊を出そうと、特殊スポンジキャップの部分をハサミで取り除こうとし、親にこっ酷く叱られてしまったのだ。似たような体験のある読者諸君はいないだろうか。
無知な子供であったとは言え、ヤマト社員たちの努力の結晶を破壊していたことを考えると、申し訳ない気持ちが湧き上がってきた…。
■じつは色も「アラビアのり」が元ネタ
ちなみに今回のアンケートの回答結果を「年代別」に分けると、興味深い傾向が見えてくる。他の世代と比べ、50〜60代は「アラビアのりが由来だと思う」という回答割合が大きくなっているのだ。

こうしたジェネレーションギャップについて、ヤマトの担当者も「50〜60代の方々は子供時代に目にしたり、親御さんから聞いたことがある、といった記憶で正答率が上がっているものと推測します」と、分析していた。
ちなみに、アラビックヤマトがアラビアのりからインスパイアを受けたのは名前だけではない。

「アラビアのりがゴムのりで琥珀色をしており、その色に『くっ付くイメージ』があったため、アラビックヤマトはあえて色をつけて琥珀色にしています」とのことで、じつはその色も「アラビアのり由来」だったのだ。
日本の糊を象徴する存在であるアラビックヤマト。次に使用する際は、この中に先人たちの苦労と努力、そして様々な閃きと工夫が込められていることを感じてほしい。
■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。道路・鉄道ネタに関する取材で、国土交通省や都道府県警、全国の道路事務所、鉄道会社に太いパイプを持つ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
対象:全国10代~60代男女706名(有効回答数)
グラフの割合は数点以下第2位を切り捨てているため、合計しても必ずしも100とはならない。




