香りを嗅いだ瞬間に懐かしい記憶がよみがえる? 約6割が経験したその現象とは
その効果の名称は、フランスの作家マルセル・プルーストが由来となっているという。
■特定の「匂いでよみがえる記憶がある」
Sirabee編集部が全国の10代〜60代の男女700名を対象に実施した調査では、全体で60.3%の人が「特定のにおいをかぐとよみがえる記憶がある」と回答した。
なお男女別に見ると、男性は53.6%、女性は66.8%という結果になっている。
■仕送りの荷物からおばあちゃんの家の香りが
編集部が話を聞いた40代の女性は、「20代で一人暮らしをしていた頃に、田舎のおばあちゃんがお菓子や食べ物を送ってくれることがあったのですが、その荷物からおばあちゃんの家のにおいがして…」と懐かしそうに語った。
祖母の家は遠方のため、仕事を始めてからは忙しくて行けなくなっていたが、そのにおいで子供の頃の夏休みの思い出が一気によみがえり、懐かしくなってその年の年末に遊びに行ったという。
■フランスの作家プルーストがその名の由来
特定のにおいによって、記憶や感情が呼び起こされる現象を「プルースト効果」という。この名称は、フランスの作家マルセル・プルーストの長編小説『失われた時を求めて』に由来する。
作中で主人公がマドレーヌを紅茶に浸した瞬間、その香りで幼いころの記憶がフラッシュバックする様子が描かれていたことから、作者の名前を取って「プルースト効果」と呼ばれるようになったのだ。
■嗅覚は記憶とリンクする唯一の五感
ではなぜ、匂いと記憶は密接な繋がりがあるのだろうか。
人間の五感のうち、視覚、聴覚、触覚、味覚は、脳の視床を通り、理性や知性を司る大脳新皮質へと送られるが、嗅覚による刺激は本能的な行動や喜怒哀楽などの感情を司る大脳辺縁系に直接送られる。
この大脳辺縁系の嗅覚野は海馬と呼ばれる記憶を司る部分と非常に近い場所にあることから、香りの刺激が嗅覚野に入った瞬間に、情緒を伴った記憶が呼び起こされるというわけだ。視覚、聴覚、味覚、触覚は大脳辺縁系には送られないため、嗅覚は記憶とリンクする唯一の五感といえる。
この嗅覚の特性を利用して、痴呆症の方の記憶を呼び起こしたり、暗記をする際に特定の香りを嗅ぎ、試験本番にその香りを身にまとっておくことで暗記した内容を思い出したり、といった効果も期待できるようだ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・蒼羽 結)
対象:全国10代~60代男女731名 (有効回答数)