しっぽに毛が無い保護犬、譲渡から1年の変貌に目を疑う 「ここまで変わる?」と驚きの声も…
ちょうど1年前に引き取られた、しっぽに毛の無い保護犬。その変貌ぶりを受けて「信じられない」と驚きの声が上がっていた。
■「こんなにかわいいのに保護犬!?」
まばらだった顔や体の毛は綺麗に生えそろい(尻尾はまだ)、表情は柔らかくなり、つり上がり気味だった目はまん丸に…。初めて出会った人には、ほぼ確実にメスと間違えられ、「美人さん」と呼ばれることが多い。
一緒に過ごしてきた記者は気づかなかったが、初めてPetfeliceに里帰りで訪れた際、保護犬時代を知るスタッフは、その変化に驚いていた模様。
また、記者の周囲には犬好きが非常に多く、散歩の最中に声をかけられたり「触っても良いですか」と尋ねられる機会も多いのだが、ちるがもともと保護犬だったと知ると、多くの人が「こんなにかわいいのに保護犬だったの!?」と驚く様子を見せる。
その際に記者が感じたのが「保護犬」に興味・関心を抱いている人は意外と多いこと。そして「保護犬と触れ合う機会の少なさ」が、保護犬を「未知の存在」にしている点である。
実際、Sirabee編集部が実施した全国の10〜60代の男女767名対象のアンケート調査では「周囲に保護犬を飼っている(いた)知人がいる」と回答したのは、全体の23.2%であった。
一方で「保護犬を飼いたい」と考えた経験がある人は3割を超えており、この「興味はあるけれど、どんな存在かイマイチ分からない」というジレンマが、保護犬を取り巻く環境における大きな問題であると考える。
そこで記者は、この厄介な「未知」を取り除く手っ取り早い方法として「うちの犬は元保護犬だよ」「保護犬は怖くないよ」という事実を世に伝えるべく、自身のSNSアカウントのプロフィールに「元保護犬をお迎え」と表記することを決意。連日、湯水のように親バカ投稿を繰り返している。
以前の記者のように「わざわざ保護犬アピールするなよ…」と疎ましく感じている人もいるかと思うが、大切なのは何よりも「知ってもらうこと」である。
このように「保護犬を迎えた」とアピールする人の中には「保護犬も、普通の犬と変わらないよ」「保護犬はこんなにかわいいよ」ということを発信したく、あえてアピールする人も多いのではないだろうか。
■施設から見た保護犬、どんな存在?
今回の記事化に当たり、愛犬・ちるを迎えたPetfeliceに、保護犬たちの実態について話を聞いてみた。
ちるが同施設に引き取られた経緯について、Petfelice担当者は「以前より保護依頼を受けていたブリーダーさんより『繁殖を引退させる』とのことで、お預かりいたしました」と説明する。
「保護犬」と聞いて「捨て犬」を連想する人が多いと思うが、こうしたブリーダー経由でやって来る保護犬も少なくないのだ。
保護犬時代のちるについて、担当者は「こちらで生活しているちるさんはとても怖がりで、お散歩が苦手でした。首輪とリードをつけるとワニがローリング(デスロール)するときのような動きを見せ、全く歩きませんでした」「知らない人も苦手で怒る、逃げる…。鼻ぺちゃな犬種も苦手なようで、よく怒っていました」と振り返る。
なお、現在も「散歩で行きたくない道は歩かない」という頑固な一面は変わっておらず、たびたび「拒否柴」ならぬ「拒否ックス」を発動させている。鼻ぺちゃ犬種もまだ苦手だが、最近は徐々に慣れてきたような気も…する。
担当者はさらに、保護犬に見られやすい行動傾向として「お散歩が苦手な子が多く、首輪やリードをつけると固まってしまったり、お外を怖がる子が多いように思います」「ちるさんほどのようなテンパった動きをする子はあまり多くはないですが、散歩慣れしていない子は多いです」とも補足していた。
■一途な甘えん坊は変わらない
さて、卒業から1年が経ったちるは、スタッフの目からはどのように映るのだろうか。
かつてを知るスタッフからは「当時と比べて、人見知りはなくなったようです!」「お店にいるときは、慣れた人以外にはぴゃーっと逃げていたので、初めましてのスタッフでも触らせてくれることにとても驚きました」とのコメントが。
現在は散歩の際に「行きつけの店」ができるなど、多くの人に撫でてもらい、オヤツをもらい、愛情を注いでもらっているため、だいぶ人慣れしてきたのかもしれない。
「毛並みも良くなり、おハゲが無くなっていて驚きました」と口にするスタッフからは、「当時から変わっていない部分としては『好きな人に一途すぎて、依存しているところは変わっていないな』と、先日ご来店頂いたときに感じました」とのひと言も。
実際、本取材に当たって店舗を訪れた際、ちるは別室で待機させていたのだが終始、窓ガラス越しにこちらをガン見している有様であった。
こうした「卒業犬」たちの近況を知ることについて、Petfelice担当者は「里親様から様々な場所に行ったご報告や、できるようになったことを共有して頂けると『良いお家に行けて良かったな』と、とても嬉しく思います」と笑顔を浮かべる。
継続してトリミングやペットホテル、トレーニングや里親会イベント(クリスマス会など)に足を運んでもらい、卒業犬たちと直接触れ合える瞬間も喜びを感じるそうだ。
また、担当者は「久しぶりに会っても覚えていてくれて、尻尾ぶんぶんしてくれる姿も嬉しいですが、お店にいるときに懐いていた子が自分に対して少し人見知りをして、飼い主さんにべったりな姿も、少し寂しいながら嬉しさもあります(笑)」と、全ての犬好きが共感するであろうエピソードを明かしてくれた。
ちるが保護犬であると知ると、多くの人が「優しい飼い主さんに会えて良かったね!」と、温かい声を向けてくれる。この言葉は非常に光栄なのだが…保護犬を迎えた身としては、若干モヤモヤを覚える箇所も。
それは、自分だけが犬に何かを「あげている」のでなく、同様か、それ以上に多くのものを犬から「もらっている」という点。本心としては、こちらが「うちの子になってくれてありがとう!」と、五体投地で感謝したいくらいだ。
また保護犬を迎える上で注意したいのが「自分は親切なことをしている」という、過ぎた思い上がり。「ペットショップから犬を迎えた飼い主を下に見る」などのマウントは無益であるばかりでなく、保護犬に対して悪いイメージが蔓延する恐れすらあるだろう。
本記事をきっかけに、1匹でも多くの保護犬が「我が家」と出会えれば、それは何よりも光栄である。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
調査対象:全国10代~60代男女767名 (有効回答数)