一見普通の標識、目的地を見てギョッとしたが… 60年前のエピソードに思わず涙

前後左右でなく上方向を指した、スケールの大きすぎる標識「宇宙」が話題に。種子島町役場は「ぜひ打ち上げの感動を味わってほしい」と語る。

2024/06/19 05:30

■それにしてもこの町、ノリノリである

「宇宙」の標識が設置されたのは、昨年11月からのこと。

南種子町

その経緯について、南種子町の担当者は「本町では、種子島宇宙芸術祭というイベントを実施しております」「光のアーティスト・千田泰広氏に芸術祭のご協力を頂いており、その際に千田氏から『宇宙までの距離表示があれば、観光地やインスタ映えするのでは』とのご意見を頂き、町の方で看板設置を行いました」と振り返る。

南種子町

続けて「日本にはここ、種子島の南種子にしか実用衛星の打ち上げ基地がないため『宇宙への発着点』との意味合いも込めて、取りつけました。世間では『地球から宇宙までの100km』と言われているようです」と、標識に込めた思いを語ってくれた。

南種子町

コメントにもあったように、南種子町には日本最大の大型ロケット発射場を有する「種子島宇宙センター」があり、町をあげてロケットの打上げ、および日本の宇宙開発を応援している。

実際、種子島と聞けば「ロケットの打ち上げ」(もしくは「鉄砲伝来」)をすぐに思い浮かべる人は多いはず。では、なぜ種子島に大型ロケット発射場が設置されたかはご存知だろうか…?

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■60年前にそんな苦労があったのか…

南種子町

種子島とロケットの深い関係性について語るには、今から約60年前の1966年(昭和41年)、科学技術庁「宇宙開発推進本部」により種子島がロケットの打ち上げ場として選ばれた頃まで遡る必要がある。

まず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の資料『種子島宇宙センターの概要』によると、ロケットおよび人工衛星の打上げ射場を選定するに当たっての考慮条件は以下の通り。

南種子町

まず、静止衛星を打上げる際には地球の自転(西から東)のエネルギーを利用するため、また極軌道衛星を打上げるため、東・南向けの発射に対して陸上、海上、航空の安全に支障がないこと。

そして日本領内で、できるだけ赤道に近いこと。なお、当時はまだ沖縄が返還されていなかったため、日本領土の最南端は与論島(北緯27度)であった。※現在の最南端は沖ノ鳥島(北緯20度)で、種子島は北緯31度

これらに「沿岸漁業者との干渉ができるだけ少ないこと」「必要な用地面積が早期に入手でき、かつ土地造成が容易なこと」「通信、電力、水源が確保できること」「できるだけ交通が便利で、人員、資材、機材の輸送がしやすいこと」「人口の密集した地帯からなるべく遠いこと」…を加えた、計7点の条件が必須となる。

しかし、できるだけ交通が便利で、人員、資材、機材の輸送がしやすく、且つ人口の密集した地帯からなるべく遠い…といったように、一見すると条件同士が矛盾しているように感じられるのも事実。

南種子町

南種子町の担当者も「これらの条件は互いに矛盾するところがあり、全条件を満たす場所を探すのは非常に困難でした。しかし宇宙センター候補地を探していた当時、上記条件に最も適合する場所として、種子島の現位置が選択されました」と、コメントしており、現在に至るまでどれほどの苦労を重ねてきたかが窺える。

担当者は「これは私見ですが」と前置きし、「当時、地域振興の核となるものとして地元にも期待をもって迎えられたようです」「建設の過程で色々と大変なことはあったと思いますが、地元の理解・協力も得られながら、順調に進められたのではないかと思います」と、当時の様子を振り返っていた。

南種子町

そして今回、村木さんのポストがきっかけで種子島に注目が集まった件については「種子島宇宙センターは、世界一美しいロケット発射場と言われています」打ち上げ時の感動をぜひ、南種子町に来て頂き、ご自身で味わって頂きたいです!」とのコメントを寄せてくれたのだ。

南種子町

我われ人類は古来より空に、そして宇宙に憧れ、浪漫を抱き続けてきた。日本で一番宇宙に近い町・南種子町を訪れれば、その浪漫をよりいっそう強く感じられることだろう。

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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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