『Animal Well』プレイレビュー 暗くて不気味な世界観に、パズルとメトロイドヴァニアの融合が光る傑作アクション
謎の量が多すぎて今なお多くのプレイヤーが奮闘中。 たった1人によって作られた傑作メトロイドヴァニア『Animal Well』を遊んでみました。
Sirabee読者の皆さんこんにちは、突然ですが皆さんはもし、自分がなれるとしたら何の動物になりたいですか?
私は厳しい自然界で生きていける自信がないので、イエネコでお願いしたい系VTuberの幽霊坂ゆらぎです。
今日は、つよつよな動物に命を狙われて自分の無力さを実感する新作アクションゲーム『Animal Well』を紹介してみたいと思います。
画像をもっと見る
■暗めのビジュアルが印象的
今回紹介する『Animal Well』は、5月9日にBigmodeからSteam/PlayStation 5/Nintendo Switchで発売されました。
本作は個人でゲームを制作しているBilly Basso氏が7年の歳月をかけて作り上げた作品で、ゲームのジャンルを簡単に説明すると「謎解き要素強めなメトロイドヴァニア」という感じです。
作品の大部分を占めるアクションパズルは正確な操作を求めるものからじっくり考えこむものまで沢山あり、思わずパズル好きが唸るようなギミックも満載。
さらに、ストーリーやバックグラウンドに関して一切テキストによる説明をしないため、自分であれこれ想像を働かせるのも楽しみの一つです。
独特のタッチで描かれる世界観は美しくも不気味で、古井戸の底のような暗く湿った世界をさまよっている時のゾクゾクするような感覚は、他のゲームではなかなか味わえない感覚です。
そもそも『Animal Well(動物の井戸)』というタイトルにも関わらず、開始早々にプレイヤーの分身として操作することになる、玉ねぎみたいな子は一体何者なんでしょうか。
しかも、探索していると突然「闇」とか「おばけ」としか言い表しようのない存在に襲われるので、私は当初本作をホラーゲームかと思っていました。
■「二段ジャンプ」は甘え?
本作が他の多くのメトロイドヴァニアと違うところとして、謎解きやパズルにかなりの比重を置いていて、「戦闘らしい戦闘」はほとんどない点が挙げられます。
(『メトロイドヴァニア』というジャンルについては、別記事で解説もしているので良かったら読んでね!)
なので、プレイヤーの前に敵が立ちはだかる時は、ほとんどの場合ギミックやパズルを解く、あるいは全力で逃げる必要があります。
一応体力の概念はありますが、レベルアップやボス撃破による成長などもないので、多くの場面では純粋なひらめきやテクニックで勝負することになるでしょう。
ちょっと細かい話になりますが、このジャンルの多くの作品では、ゲームの進行にしたがって「二段ジャンプ」「ダッシュ」「壁破壊」などをアンロックしていくがある種の王道パターンなのです。
新たに入手した能力で、それまで見えていたのに行けなかったエリアに到達する。数あるゲーム体験の中でも、最高に気持ちいい瞬間の一つですよね。
ですが、本作で入手できる、それらの能力の代わりとなる道具は「シャボン玉」「フリスビー」「コマ」と、他の作品ではあまり見ない珍しいものばかり。
それらの使い方も自分で発見・工夫する必要があり、前述の通り説明はほぼないに等しいので、終盤になってからまったく新しい使い方を発見する、なんてこともありました。
■高い自由度とパズルの密度
世界観やビジュアルだけでも個性の強い部分が目立ちますが、本作を語る上で絶対に外せないのは「謎解きの密度」です。
インディーズなど小規模開発のゲームで遊んでいると、ときおり制作者の熱量がすごすぎる作品と出会うことがありますが、本作はまさにソレでした。
ジャンル的にはTom Happ氏がたった1人で5年かけて作り上げた『Axiom Verge』が真っ先に思い浮かびますが、あの作品も謎解きの量が尋常ではないという奇妙な共通点がありますね。
謎解きが多いとは言っても、本作はプレイヤーがある程度攻略ルートを自由に構築できる上、ただクリアするだけであればそこまで難しいパズルやギミックはないと思います。
しかし、ほとんどの人はゲームをクリアした段階でマップが全然埋まっておらず、解いていない仕掛けだらけで「アレは一体なんだったんだろう」と困惑することになるでしょう。
なんとなく戻ってそのパズルを解いてみると、そこで新しい道具が手に入ってしまい、さらにそれを使ってパズルを解くと、新たなエリアへの道が開けて、そこには新しい謎が…。
これらの謎解き要素は世界観と直結しているものあり、何一つ言葉で語られない不思議で不気味な世界観について、思わず考察したくなること請け合いです。
高純度の謎解きにどっぷりと浸かりつつ、たまには背景の物語について思いをはせてみるのもいいですね。