スペイン政府がAI技術用いた密漁船監視システム導入 年間2600万トンの闇市場取引を阻止
密漁船による漁獲を阻止するため、スペイン政府によってAI技術が用いられているという。闇市への流入に歯止めをかける取り組みに、注目が集まっている。
密漁により闇市場に流れているとみられる2,600万トンに及ぶ漁獲を守るため、AI(人工知能)を活用した監視への取り組みが進められているという。『BBC』がレポートしている。
■密漁船による被害
スペイン政府は昨年、アルゼンチン海峡付近でスペイン船25隻を発見し、罰金を科した。これらの船は、この領域でGPSベースのAIS(自動識別システム)をオフにしており、密漁行為が疑われている。
Google、海洋保護団体「Oceana」、環境団体「SkyTruth」によって共同設立された海洋監視イニシアティブのグローバル・フィッシング・ウォッチによると、違法または無規制の漁業は漁獲量の20%にも上ると推定。また、国際連合食糧農業機関は、密漁行為による違法漁業で、毎年2,600万トンも漁獲されている可能性があると指摘している。
こうした密漁による魚が闇市場に流れることで、最大230億ドル(約3兆4,700億円)以上の損害を被っているという。
■魚の生態系に悪影響
密漁は、闇市による被害額だけでなく、クロマグロなどの乱獲によって海洋生態系とその食物網に、悪影響を及ぼしているとも考えられている。
国連は、世界の魚資源の3分の1が生物学的に持続可能なレベルを超えて漁獲されており、特にクロマグロの個体数が歴史的な未漁獲時の水準のわずか2.6%に減少していると報告している。
また違法漁業を行う密漁船によって特定の魚種が犠牲になっており、中でもサメとエイは最も影響を受けているとされている。さらに、野鳥やウミガメなども混獲の結果、絶滅の危機に瀕している種があるそうだ。
■AIを駆使した監視システム
グローバル・フィッシング・ウォッチは、船の位置情報を可視化して監視するために、AIソフトウェアと衛星画像を活用したシステムを構築した。これにより、AISを搭載している船とそうでない船を含め、6万5,000隻を超える商業漁船の動向を地図化できるという。
AISは全ての船に義務付けられていないため、同システムの漁業検出アルゴリズムにより、旅客船、石油タンカー、輸送船または漁船の判別が容易になる。現在は世界の船の4分の3が公的に追跡されておらず、特にアフリカと南アジア周辺のエリアでより小型の漁船を発見できるように、高解像度画像の導入に取り組んでいるという。
さらに、違法漁業の根絶のためには、位置情報を素早く入手する必要がある。サウサンプトン大学と地元企業「RS Aqua」が、リアルタイムで情報を送信する潜水艦ロボットを構築中だ。AIと水中センサーにより魚群の音や船の音を識別できるため、保護水域での監視に役立てられるそうだ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)