イーロン・マスク氏のニューラリンク社「脳チップ」が始動 患者がオンラインチェスをプレイ
脳にチップを初めて埋め込んだ患者が、オンラインチェスをプレイする様子を生配信した。神経工学の専門家は、「まだ初期段階」との見解を示している。
ブレイン・マシン・インタフェースを開発するニューラリンク社の脳チップを埋めた男性が、オンラインチェスをプレイし話題になっている。ただし専門家からは、「画期的ではない」との声も上がっているという。『BBC』『The Guardian』が報じた。
■脳チップを埋め込んだ男性
21日、イーロン・マスク氏が共同創設者であるスタートアップ企業のニューラリンク社が、脳にチップを埋め込んだ最初の患者がオンラインチェスをプレイする様子を公式X(旧・ツイッター)で配信した。
患者はダイビング中に事故に遭い首から下が麻痺してしまったノーランド・アーボーさん(29)で、今年1月に脳にチップを埋め込む手術を受けた。
アーボーさんは配信の中で、「手術は簡単でした」「1日で退院し、認知障害もありません」と術後の経過が順調なことを公表している。
■配信でチェスをプレイ
アーボーさんはかねてよりビデオゲームが好きだったようで、事故の後はもうゲームはプレイできないと諦めていたそうだ。
ところが脳にチップを埋め込んだことにより、「ここ何年かは、スティックを使ってプレイしていましたが、今は思考だけでプレイができます」という。その言葉通り、実際に画面上のカーソルを動かして見せた。
また、コントロールに必要なパッド器材がオンライン仕様ではなかったことや、介助なしにパソコン操作が難しく長時間のプレイは不可能だったが、チップを埋め込んでからは、ビデオゲーム『シヴィライゼーション VI』を8時間連続でプレイできたそうだ。
アーボーさんは、「現在唯一の障壁があるとしたら、チップを8時間使用後に充電しなくてはならないことですね」と語っている。
■専門家は「画期的ではない」と慎重
アーボーさんの件を受け、アメリカ国立衛生研究所の元神経工学プログラムディレクターであるキップ・ルートヴィヒ氏は、ニューラリンクの試みは「画期的ではない」「移植後はまだ初期段階なので、情報制御を最大化するために、ニューラリンクと被験者側の両方で多くの学習が継続中である」と述べた。
しかし、「インプラント前にはできなかった方法でコンピュータと接続できるようになったのは、患者にとって前向きな進歩だ」と成果を評価している。
なおロイター通信が、先月にニューラリンク社が「人間の脳で試験を許可された」と発表してから1ヶ月も経たないうちに、FDA(アメリカ食品医薬品局)の検査官から動物実験の記録と品質管理に関する指摘を受けていたと報じていた。そしてこの件に関し、ニューラリンク社はFDAの質問に応じていないと伝えられている。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)