エジプトで遭遇した客引き、ガイド本の掲載に大喜びだが… 完全に「知らぬが仏」と話題
エジプト旅行中、ラクダ乗りの男性が「ガイドブックに自分が載ってる」と自慢しだす。ページには「デタラメな客引きに注意」と紹介されていた。
■ピラミッド周辺の客引き、逞しすぎる…
旅人Aさんが件の男性と出会ったのは、2010年3月4日のこと。当時、大学生だった旅人Aさんは春休みを利用した一人旅の最中で、日本人宿で意気投合した友人と共に、ピラミッド観光へ向かったのだ。
なお、現地の客引き集団のバイタリティーは相当なもので、旅人Aさんは「現在はどうか分かりませんが…」と前置きしつつ、「当時はピラミッド入場ゲート前から詐欺まがいの客引きが横行していました」と振り返る。
ざっと挙げてもらっただけでも「今日はピラミッドは休みだ!」「ここからピラミッド入口まで何kmもある。ラクダで案内してあげるぞ」(実際は20m先に入口がある)「自分は教師だ、ぜひ学校を見に来てくれ」(旅行会社に連れていかれる)など、多種多様な誘い文句がズラリ。
旅人Aさんは「旅行者の無知に付け込む、悪質な客引きの見本市のような場所でした」と忌憚のない、火の玉ストレートな感想を口にしていた。
特に「ラクダとの記念撮影」を推してくる客引きが多かったそうで、「私と友人も10秒に1人のペースで『ラクダ乗ろうよ!』という勧誘を受けていました」というから驚きである。
そんな客引きらに「ノーサンキュー」と応じるにも疲弊し切ったピラミッド観光終盤。旅人Aさんと友人の元に、近づいてくるひとつの影が…。そう、彼である。
■『地球の歩き方』担当者は「現在も危険」
サングラスをかけた客引きの男性は「おい、日本人か? お前が持っている、あの有名な黄色いガイドブックを見せてくれないか?」と、旅人Aさんらに声をかける。
友人がバッグから『地球の歩き方 エジプト』を取り出して差し出したところ、男性はページをパラパラとめくり、ニヤリと笑って「この写真、おれだ」とひと言。
思わず目を皿にして男性と見比べ、驚きの声を上げた2人を見て、男性は満足げな様子に。しかし2人は、下部に書かれた「ラクダの客引きはかなりしつこい」という脚注に気づいてしまったのだ。
男性に真実を伝える選択もあったが、「注釈の本当の意味は、知らせない方が幸せなのではないだろうか」と本人の目の前で(日本語で)会議を実施した結果、「沈黙」の道を進むことに。
なお、男性の写真は撮らせてもらったが、ラクダ乗りのサービスについては丁重にお断りしたそうだ。
当時の心境について、旅人Aさんは「帰りのバスでは友人と『世の中には知らない方が良いこともあるよね』と話し合いました。この事実は本人に知らせず、墓まで持っていこうと思います。ピラミッドだけに」と、エジプシャンジョークを交えつつ、振り返っている。
続いては、話題の男性を含むエジプトの客引き事情について「地球の歩き方」担当者に話を聞くことに。
しかし、今回話題となった写真が使用されているのは『地球の歩き方 エジプト 2010〜2011』であり、やはり10年以上も前のガイドブック詳細について、同社よりコメントは得られなかった。
なお、担当者は「コロナ禍を経て、旅行等が再開した今現在もラクダに関するトラブルはよくありますので、旅行者の皆さまにはくれぐれもご注意ください、と注意喚起をお伝えさせて頂ければと存じます」とも呼びかけており、ピラミッド周辺は相変わらず「修羅の国」となっているようだ。
エジプト旅行の際は、ノリノリの笑顔とえげつない客引きのギャップに騙されないよう、気をつけたい。
■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)