スーツよりも安くて便利な「上下9000円」の“なんちゃってスーツ” これ着てTV番組に出たところ…
【鈴木貴博『得する経済学』】近年、ビジネスパーソンに注目される“なんちゃってスーツ”。筆者がその利用術を紹介する。
「だんだんちょっと違ってきた気がするけど、まあいいか」
ジーユーの試着室で私がそうつぶやきながら結局購入することにしたのが、ジーユーの上下セットアップのジャケットとパンツ計8,980円です。
誰も知らないというか、知らなくてもいい話なのですが、私は5年ほど前から経済評論家としてテレビに出演する際にスーツの代わりにジーユーのセットアップを着用するようにしています。理由は「誰もツッコまないところが面白いから」です。
■「なんちゃってビジネスフォーマル」
ビジネスシーンで普通にビジネスパーソンが着るのが、ウール素材のビジネススーツ。いわゆる背広です。少なくとも2000年代初め頃まではスーツといえば当然、素材はウールだったものです。それも上級ビジネスパーソンならひと揃え8万円ほどのスーツをびしっと着るべし、とされてきました。それがおじさん世代の常識でした。
ところが地球温暖化で状況というか風向きが少しずつ変わり始めます。まず最初にクールビズが始まってみんながネクタイをつけなくなり始めます。次に夏場はスーツではなくビジネスカジュアルでも職場で通用するようになりました。
そして、その次に出てきたのが、スーツなのかビジネスカジュアルなのかの二択ではなく、その中間的なビジネス向けの新しい洋服でした。夏場に登場したポリエステル製のとても軽いビジネスジャケットがそのさきがけです。
■ポリエステル新素材のビジネスフォーマルが出現した
クールビズとはいえ半袖のワイシャツではどうもしまらない。でも今や夏場にスーツを着るのは地獄だ。そんなトラディッショナルなビジネスパーソン向けの折衷案として、外見がスーツの上着に見える軽~いジャケットが出現したのです。
やがて、そのようなジャケットとセットアップして外見がスーツに見えるパンツとのセットが出現しました。夏場なのにポリエステルの薄い素材の上下で、その表面がウール素材に見まがうかの商品。これを着ていると夏場なのにスーツを着ているビジネスパーソンに見えるわけで、それが面白くて私も早速採用しました。
ジーユーの場合、だいたいの場合はジャケットが4,990円か5,990円、パンツが2,990円というのが定価で、上下そろえても8,000~9,000円程度というのはコスパの観点でもなかなかに良い商品です。
■素材はジャージなのに外見はビジネスフォーマル?
さらに出てきたのが春秋用のセットアップ。これが実にすぐれもので、外見がスーツにしか見えないのに、素材はなんとジャージです。
「ジャージでテレビに出ても大丈夫かな?」
と、心配しながら朝の報道番組にゲストとして出てみたところ、誰も気づきませんでした。5年ほど前のお話しです。
それ以来、私は地方出張はスーツではなくもっぱらこの上下ジャージで出かけるようになりました。なぜなら楽なんです。新幹線に乗っている時も、ホテルの部屋で過ごしている時も、見た目はスーツなのに着心地はジャージ。ですから着替える必要もなく、出張先に着替えを持っていく必要までなくなりました。
さて、それでも困ることがひとつあって、それが厳冬期に着るのはやはりウール素材のスーツが一番だということでした。ところが今年の冬、ついにそれを解決する商品を見つけたのです。
■ついに登場…発熱性素材のなんちゃってスーツ
それがスタイルヒートという体の水分を熱に変える繊維テクノロジーの商品で作られたストレッチパンツと、その商品とのセットアップになるポリエステルと綿の混紡のビジネスジャケットでした。
見た目はカシミヤのスーツによく似た質感で、それでいてストレッチが効いているので、外出時にはとても楽に過ごすことができます。
唯一の欠点は、ジャケットのデザインが若干カジュアルなところ。スーツと違ってポケットが開放型になっているので、外見を見た人は、
「これはスーツではなくてカジュアルジャケットだ」
とすぐに気づきそうです。それで冒頭のシーンのようにちょっと違うかと悩んだわけですが、結論としては、
「暖かいし、まあいいか」
ということで購入を決めました。そのような事情から私はこの冬は、スーツっぽいけどよく見るとスーツではない服装でビジネスシーンを闊歩しているのです。
■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「ビジネスカジュアルで仕事をする」をテーマにお届けしました。
・合わせて読みたい→「ジレ」ビジネスファッションをクラスアップするアイテム3選
(文/鈴木貴博)