カメラ量販店で安く買い物するための「交渉術」、ポイントは“タイムシフト”にあり
【鈴木貴博『得する経済学』】行くたびに値段が上下する家電。今回は高価な家電購入の際に役立つ、こんな買い方のお話です。
「あのう、すみません。この名刺を見ていただきたいんですけど」
カメラ量販店でちょっと高額な家電を買いに行った時の話です。ちょっと申し訳なさそうに売り場の店員さんに名刺を差し出す私の姿がありました。
…いや誤解して欲しくないのですが、私の名刺ではありません。「わたしはこうこうこういうものでSirabeeでも小売流通の記事を書いている者なのですが、安くなりませんか?」みたいな交渉をしているわけではないです。カメラ店に前回訪問した時の“店員さんの名刺”を差し出しているのです。今回はその話をしたいと思います。
■二度訪問して購入するのが私の方針
洗濯機や冷蔵庫、テレビなど大型家電を買う時、私は基本的にカメラ量販店で買うようにしています。ネットの最安値で買ったほうが安いのにそうする理由が二つあって、それなりにお店の人にきちんと商品説明をしてもらえることと、ポイントで長期保証がつけられるからです。
それで購入する時には最低2回は店頭を訪れます。最初の訪店では商品の比較やそれぞれの特徴など説明をしっかりとしてもらい、どの商品を買うのか候補を一つか二つに絞り込みます。それで家に戻って一週間ほど口コミなども読んだ上で、本当にそれでいいかを検討し、2回目に買うのが私のやり方です。
その最初の訪店の際に、説明してくれた店員さんから最終的な購入候補の商品について価格を名刺に書いていただいて、持ち帰るのです。
■最近増えた「値上がりする」ケース
私はある程度世間に顔を知られていることもあってそこまではやらないのですが、こういった名刺をライバル店に持ち込んでさらなる値引きを目指す方もいらっしゃいます。今回の話題はその話ではありません。
さて、これは最近の傾向なのですが、そうやって2回目に訪問をした時に価格が値上がりしているケースが出始めているのです。以前の常識では家電は時間が経つとどんどん値段が下がるものだったのですが、「ダイナミックプライシング」(その時の需要に応じて価格を変動させる仕組み)が流行する昨今、その逆が起きているのです。
インフレで値上げラッシュのご時世も関係しているかもしれません。最近、二度も経験したのですが10万円台の家電購入を「これにしよう」と決めてお店に再訪したところ、店頭価格が値上がりしている場面に遭遇したというわけです。
それで冒頭のシーンです。タイムシフト、つまり以前の価格に戻らないかを交渉してみたのです。
■そこで以前の名刺をお出しすると…
私がおそるおそる店員さんに差し出した名刺には2週間前の日付と、その時の店員さんが提示してくれた価格が書かれています。そして今、店頭に置かれた同じ商品の値札はそれよりも1万円高い値段に変更されています。
「すみません。先日、この方に相談したときはこの価格だったのですが…。今日、買うつもりなので、この価格にしていただくことは可能でしょうか?」
そう相談したわけです。すると応対してくれた店員さんはうなづきながら、わかりましたと価格を1万円下げていただくことができました。
ちなみに私の経験談ですが、この相談はいつも成功するとは限りません。中には一度目の訪店の際、店員さんが「もし今日買っていただけるのなら思い切ってこの価格にします」と言って名刺に価格を書いてくれるケースもあって、日付が変わるとダメというケースもあるのです。
あくまで値下げはその時に対応していただける店員さんの善意だということは理解して、もし下げていただけたら感謝しましょう。
■もう一つはこんなケース…時間が無くて
さて、最近二度あったといいましたがもうひとつはこんなケースです。仕事の合間にちょっとカメラ量販店に寄った際、欲しかった商品に「値下げしました」という値札がついていたのです。隙間時間で買う暇まではなかったためそれをスマホで撮影しておきました。
ちなみに小売店は昔はどこも売り場のカメラ撮影は禁止だったものですが、最近はみんなスマホを持っているので怒られるケースは減りました。それでやはり2週間後ぐらいの別の週末にお店に出かけ買おうと思ったのですが、値下げは終了して元の1万円以上高い価格になっていたのです。
それで店員さんに声をかけて、スマホの写真を見せながら、
「本当にすみません。〇月〇日に伺った時に時間がなかったので写真だけ撮ったのですが、ちょっと今と値段が離れていまして、なんとかなると嬉しいのですが」
と、タイムシフト価格で買えないかをお願いしてみました。この時は店員さんが「やれるかどうか、やるだけやってみます」と言ってどこかに消えて、10分ぐらいしてから戻ってきました。
「ちょうど交渉できる上の人間がいたので話をしてOKしてもらいました」
ということで、無事1万円とちょっと安く買うことができました。いつもできるとは限りませんが、とにかく値段が変わりやすい昨今、少し前の価格を何らかの証拠に残しておくことは役に立つかもしれませんよ。
■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「家電量販店での意外な交渉術」をテーマにお届けしました。
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(文/鈴木貴博)