90歳女性がバスで1時間かけフードバンク通い イギリスで生活危機が過去最悪の地域も
地方に住む高齢女性が、生活費を抑えるためフードバンクを利用している。週1回、バスを利用して開催場所に向かうという生活危機が浮き彫りになった。
物価高騰のあおりから、フードバンクの需要が急増している。年金暮らしの女性がバスで毎週1時間かけて通っていることを、『Mirror』がレポートした。
■90歳女性がバスで1時間かけ…
イギリス郊外にあるティヴィデールに住むパトリシアさん(90)は、1時間かけて毎週月曜に大都市バーミンガムで開かれるフードバンクに行き、食料を調達しているという。
フードバンクとは、企業や食品メーカーなどが正規品として扱わないが、品質に問題のない食料品を無料で提供する試みで、一般的にNPO法人などボランティアによって運営されている。
パトリシアさんが利用するフードバンクは、Bekindという慈善団体により開催され、毎週100人以上の人が訪れるという。
■フードバンク利用は増加中
イギリスのフードバンクネットワークによると、今年11月までの6ヶ月間で約150万個の緊急支援パッケージを配布しており、この数字は過去最大になる勢いで増加しているという。
配布先の65%が子供のいる家庭向けだったそうで、慈善団体代表は「どの地域にもフードバンクがあって当たり前と思う世代がいるのは、正しくない」と話す。
また生活必需品を頻繁に買えない世帯も増加しているため、近隣のビジネスにも影響が出ているのだという。同慈善団体は子供向けの支援パッケージを今年すでに約54万3,600個準備しており、2021年の37万500個と比較すると約1.5倍の数になっている。
DWP(労働年金省)の広報担当者は、「2010年に比べて絶対的貧困者は170万人減少している一方で、一部の家庭が生活困窮であることは認識している」「私たちは国民生活賃金を再び引き上げ、35億ポンド(約6,400億円)を投じ、インフレの抑制を図っている」と言及している。
■ホームレスが増加
フードバンクに通うパトリシアさんは、「この場所が好きで、とても感謝しています。高い野菜や果物をもらいます」と話している。
新型コロナウィルス感染症のパンデミック中に開催を始めたBeKindの創設者ヤスミン・ポールセンさんは、「当時は約40人ほどがサービスを利用していたが、最近は平均150人ほどが集まる」と話している。
今年に入り過去最高の180人を数えた週もあり、生活困窮からホームレスになる人が増加しているという。最近、Bekindは地域社会への貢献が評価され国王賞にノミネートされたものの、ヤスミンさんは需要レベルの急上昇に「恐怖を感じている」と現状を重く受け止めている。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)