悪天候で豪華客船内がパニック状態 18時間も高波を受け100人が負傷
9メートルの高波が18時間も豪華客船を襲い、乗客はパニックに。「死ぬかと思った」と語った人も…。
イギリスの豪華客船「The Spirit of Discovery (スピリット・オブ・ディスカバリー)」が航行中に30フィート(約9メートル)の高波に襲われた。乗船していた約1,000人の乗客のうち、約100人が負傷したという件を『The Sun』『DailyMail』が伝えた。
■豪華客船18時間の戦い
10月24日、イギリスの豪華客船「スピリット・オブ・デスカバリー」が、カナリア諸島を巡る14日間のクルーズを開始した。
目的地は北太平洋に位置するカナリア諸島の一部であるグラン・カナリア島だった。しかし嵐の勢いが強まり、船は急きょスペイン北部のラ・コールニャに向かうことになった。
港が閉鎖されていたため停泊することはできず、船は嵐に見舞われ足止めとなってしまった。最終的に、船はスペインとフランスの海岸湾、ビスケー湾で停泊。そこで18時間以上もの間、約30フィート(約9メートル)の高波が船に打ち付けられることになった。
■船の方向転換で負傷者続出
高波がビスケー湾に押し寄せ安全装置が作動したため、船は急激に左旋回。船長からは「座っている人は横になってください」と指示が出され、幾度となく「船は大丈夫です」とアナウンスが流れた。
船内ではバルコニーのガラスが割れ、客室の家具がひっくり返されるなど、高波の影響をまともに受けていた。目撃者によると、船の食堂の一部が医療ステーションとして機能し、負傷した人々が処置を受けていたという。
船が急旋回した時の衝撃で多くの人が負傷したとみられ、蘇生処置を受ける人や骨折によりタンカーで運ばれる人など、医療スタッフが対応に追われていたそうだ。
■乗客は「死ぬかも…」
高波を受けながら停泊した18時間は、乗客にとって死への恐怖を味わった時間だったという。乗客の中には、沈没を恐れて救命胴衣を身に着けたまま横になる人や、家族へのメモを残す人もいたという。
両親を連れてクルーズに参加した60代の男性は、船が急に旋回した時に80代の母親が床に投げ出されて負傷したという。男性はこの時を振り返り、「周りで物がぶつかったり砕けたりしており、自分たちは死ぬのではないかと思った」と語る。
■クルーズ会社への法的措置
船がイギリス・ポーツマス港に入港したとき、すでに8台の救急車が待機しており、重傷患者5人が病院に搬送された。母親が負傷した男性は、このクルーズで1万9,000ポンド(約350万円)を支払っており、クルーズ会社に対し何らかの法的措置を求めるとしている。
男性は、クルーズ会社が安全よりも旅程を優先した過失と指摘している、会社側は「予測された困難な状態に適切に対処した」と主張している。現段階で、最高責任者から乗客全員に謝罪の手紙が送られたが、補償については示されていないという。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)