『ダ・ヴィンチ・コード』6千冊を回収したアーティスト 再生紙で著作権切れ小説発行
『ダ・ヴィンチ・コード』の古本を集めた後で、著作権切れの長編作品を再発行させたいと考えたアーティスト。人気作の紙が再利用され、名作を蘇らせたことが話題を集めた。
ダン・ブラウン著の長編推理小説『ダ・ヴィンチ・コード』を、アーティストが6,000部回収した。古本を再利用し、著作権の切れた作品『1984』を印刷、再リリースしたという話題を『CNN』が取り上げている。
■『ダ・ヴィンチ・コード』
『ダ・ヴィンチ・コード』は、アメリカの小説家であるダン・ブラウンが2003年に発表した長編推理小説。ルネサンスを代表する芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチをモチーフにしている。
2006年公開のトム・ハンクス主演の同名映画では、宗教的な背景や歴史、科学的根拠などに矛盾があるとして、評論家から批判を受けた。
レオナルド・ダ・ヴィンチが宗教的な信念を絵画に残したという逸話があり、映画でもその部分を誇張された演出がうかがえる。しかし小説の内容には歴史的証拠が欠如しており、反カトリックと勘違いさせるとして、美術評論家からの評価は辛かった。
■古本の寄付
非営利団体が運営するチャリティショップ『オックスファム (oxfam)』のとある店舗では、『ダ・ヴィンチ・コード』が1日1冊のペースで寄付されていたという。
予想以上に古本として回収され始めたため、店は「『ダ・ヴィンチ・コード』の寄付はもう結構です」と注意書きを掲げるほどだった。
ところが、それを見たアーティストのデヴィッドさんが、古本を利用するため回収を続けるよう頼んだという。デヴィッドさんによると、その時は具体的な使い道がなかったそうだが、学生時代に読んだイギリスの作家ジョージ・オーウェルの作品『1984』を読み返し、あるアイデアを思いついた。
■『1984』を再出版
デヴィッドさんは、ハードカバーも含め6,000冊の『ダ・ヴィンチ・コード』を回収。2020年にジョージ・オーウェルの没後70年を迎え、著作権が失効したと知り、『1984』の再版を決行したのだ。
このプロジェクトについて、デヴィッドさんは「奇妙な偶然が重なった」と話す。依頼したデザイナーの祖父は『1984』の初版の校正者であったり、使用していた製紙工場が全焼したというのだ。
2017年より始めた古本回収作業から6年を経て、1,250冊の『1984』が完成。最初の250部は495ポンド(約9万1,000円)で販売し、残りは795ポンド(約14万5,000円)で販売されたが、11月現在で完売している。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)