80年間も脳に釘が刺さっていた女性 戦時の口減らし「子殺し」から生き延びたか

CTスキャンの結果、脳に釘が刺さったまま80年間生きてきたことが判明した女性。戦争による飢饉がもたらした、悲惨な出来事だとみられている。

2023/10/27 08:30

CTスキャン・脳

生まれてから80年間、脳に釘が刺さっていることを知らずに生きてきたロシア人女性。実は、第二次世界大戦中に横行していた「子殺し未遂」の被害者だったという驚愕の事実を、『DailyMail』が取り上げている。


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■3センチの釘が脳に…

ロシアに住む女性(80)が、病院でCTスキャンをしたところ、3センチの釘が脳に刺さっていることが判明した。しかし女性は、これまで一度も頭痛や障害などに悩まされたことはないという。

その釘は、脳の中でも感覚情報や計算などの能力を司る頭頂葉という柔らかい場所に刺さっていた。そのため医師らは、釘を抜く手術が問題を引き起こすリスクがあるとして、除去はされなかったという。

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■子殺しの事実

第二次世界大戦中のロシアは食糧難で、人々は飢餓状態だった。そこで口減らしのため、大人は新生児の頭に釘を刺し、傷口が隠れたころに死亡に至らせるという「子殺し」が行われたそうだ。

この女性の生まれは1943年で、両親が子殺しを試みたものの、死亡に至らなかったケースだと推測される。

女性が生まれた当時、ロシアはすでに長い飢餓状況が続いており、約1,100万人が命を落としていたという。「飢餓による子殺しは決して珍しくなかった」と、ロシア・サハリン保健当局も公言している。


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■生存は稀なケース

子殺しについては保健当局も慣習性を認めたが、女性が80年間も気付かず生き延びたというのは、非常に稀なケースだという。

女性に刺さった釘は頭頂葉の中でも左頭頂葉にあり、呼吸などの神経を司る部位を傷つけなかったのが幸いだったと、専門家は推測する。

体に異物が入ると、ほとんどの場合は感染症などを起こすが、女性の脳はそうした反応を起こさなかった。医師らは、女性が成長期だったため、脳が釘の周りに神経を再配線できたことで、順応したのではないかとみている。


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■CTスキャンの写真公開

ロシア・サハリン保健当局は医師からの報告を受け、女性のCTスキャン写真をロシアのチャットアプリ・テレグラム(Telegram)で公開。「患者の健康は危険にさらされてはいない」「主治医が女性の経過観察にあたっている」と述べた。

過去に、中国で脳に針が見つかった女性のケースが報告されている。しかしこの女性は、40年以上にわたり原因不明の頭痛に悩まされ、約1.8センチの針が手術で除去された。幼少期に受けた薬の投与で、注射針が残ってしまったとみられているそうだ。

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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子

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