北朝鮮がミサイル計画に米国IT企業を乱用 従事者をリモート派遣し資金調達
アメリカの連邦捜査局は、北朝鮮がIT人員をアメリカの企業に送り込み、資金調達のために米ドルを稼いでいたと報告した。
北朝鮮がアメリカのIT企業に熟練の北朝鮮人IT従事者を雇用させ、ミサイル計画の資金に充てていた。連邦捜査局(FBI)などの調査で判明したと、『USA TODAY』『ABC NEWS』が報じている。
■IT従事者をリモート派遣
アメリカ連邦捜査局は、北朝鮮がアメリカのIT企業で何千人もの北朝鮮人IT従事者をリモート雇用させていた事実を、明らかにした。報告書によると、北朝鮮は中国やロシアに居住しているIT従事者に、アメリカ在住とみせかける偽造IDを発行していたという。
アメリカ国内のWi-Fi使用料を計上し、あたかもアメリカを拠点としてリモート業務しているかのような工作をしたとみられている。北朝鮮人のIT従事者から得た給与は、北朝鮮が弾道ミサイルの開発資金として送金されていたことも判明した。
■約150万ドルを押収
アメリカの捜査当局は、これまでに北朝鮮が資金送金の目的で使っていた17のウェブサイトを閉鎖した。また捜査の一環として約150万ドル(約2億2,000万円)を押収したとしている。
北朝鮮のIT従事者らは、多額の給与を稼いだだけでなく、ネットワークへのハッキングにより雇用元の情報も盗み出していた。
調査当局は、北朝鮮による偽造とは知らずIT従事者を雇用した企業名や数については、明らかにしていない。しかし、数年前からこの行為が慣行していたことは把握していたという。
■10年前から慣行している
アメリカ連邦捜査局をはじめ、財務省や国務省は2022年5月に「非北朝鮮国民を装って就業する行為」について警告を発していた。これは、アメリカ政府が北朝鮮の金正恩政権はIT技術や教育推進を強化している、という情報を察知していたからだ。
アメリカのサイバーセキュリティ企業の責任者は、「北朝鮮が兵器資金集めのため、ITフリーランサーを利用する行為はここ10年続いている」と指摘。「パンデミックの影響を受けて加速した」とも話している。
■高度になる犯罪
北朝鮮による兵器開発のために行われた事件の摘発は、これが初めてではない。2年前、北朝鮮のコンピュータプログラマー3人と政府軍事情報局のメンバーがハッキングの罪で起訴されたが、北朝鮮の政府命令だったと主張した。
昨年、北朝鮮ハッカーが約6億3,000万ドル(約938億円)以上の仮想通貨を盗んだことがわかっており、高度なITスキルを備えた人材を育成されているとみられている。
アメリカ政府は企業に対し、ビデオ通話により顔見せを義務付けるなど、対策を講じるよう指導している。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)