都内河川敷で発見された凶器、卑劣すぎる正体に目を疑う… 環境局は「許可してない」
東京・足立区の河川敷で発見されたトラバサミ。環境局に問い合わせると「無許可で設置されたもの」と判明。
9月末、東京足立区の河川敷でトラバサミが発見された。あまりに危険すぎる代物に驚きの声が多数上がっていたが、関係各所に確認したところ、さらなる驚きの事実が明らかになったのだ…。
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■草むらでとんでもない物体に遭遇
注目を集めたのは、動物保護のボランティアを行なう高沢守さんが投稿した一連のポスト。
「拡散希望」という見出しのついた投稿には「これは冷静に考えれば、人、とくに子供が罠にかかれば手足を失うかもしれない大事件です」「本日、都内足立区某所(子供も遊んでいる場所)でトラバサミにより、地域猫が怪我を負いました。数日前から2匹の地域猫も行方が分かりません」と、衝撃的な内容が綴られている。
ポストに添えられた写真を見ると、草むらに設置された大きなトラバサミが確認できたのだった。ポスト本文は「とにかく絶対に許せません」と、強い怒りを滲ませた1文で締められている。
■「日本の話と思えない」
あまりにショッキングな光景を捉えたポストは、投稿からわずか数日で3万件以上ものリポストを記録するほど大きな話題に。
他のXユーザーからは「気づかず踏んだらと思うと、ゾッとする…」「子供も遊んでいる場所で、これは本当に危ない」「日本の話とは思えない…」「場所も最悪だし、そもそもトラバサミって禁止されてるのでは…」など、驚きと怒りの入り混じった声が多数寄せられていた。
ポスト投稿主・高沢さんに詳しい話を聞いたところ、件の光景は9月26日、地域猫の世話をしている荒川河川敷で目撃されたものと判明。トラバサミには猫が1匹挟まっており、急いで外したものの、猫は逃げ出してしまったそうだ(現在は保護済み)。その後は近隣の警察署に通報し、現地の状況を改めて確認することに。
同地ではひと月前より、急に姿を見せなくなってしまった地域猫の事例が見られており、高沢さんは件のトラバサミ、および設置者との関連性を強く感じているという。
今回の取材に際し、高沢さんは「(トラバサミが見つかったのは)休日に遊びにやって来る子供や、スポーツを楽しむ人々で賑わう場所なので、事故が起こる可能性は決して低くありません」「他のエリアでは犬や猫が大怪我を負ってしまった…などの事例も存在するので、強い怒りを感じています」と、心境を語ってくれた。
果たして、今回問題となった「トラバサミ」はどれほど危険な存在なのだろうか。関係各所に取材を敢行したところ、あまりに恐ろしすぎる正体が明らかになったのだ…。
■日本におけるトラバサミ
まずトラバサミの「使用」に関する詳細をめぐり、「環境省・鳥獣保護管理室」に話を聞いてみることに。なお厳密にいうと、今回被害を受けた地域猫は「野生動物」に該当しないため「鳥獣法管理保護法」の対象外となる。
こちらの前提条件を踏まえた上で、環境省の担当者は「そもそもトラバサミは『狩猟』目的での使用は禁止されています」「『捕獲』目的であれば、条件を満たした上での使用が許可されますが…ギザギザの歯がついているものは、まず許可がおりません」とのコメントを寄せてくれた。
「トラバサミ」と聞くとギザギザの形状を連想する人も少なくないと思うが、そうしたトラバサミを使用するには「どうしてもその形状でなければいけない理由」が必須となってくる。且つ、大きさが12cm未満、緩衝材とのセットでの使用、などの条件も重要なのだそう。
では話題となったトラバサミは認可され、正しい手順を踏んで設置された物なのだろうか。続いて「東京都 環境局 自然環境部」に話を聞いてみると、同局からは「東京都では少なくとも直近5年間で、トラバサミの使用に関して許可を出した事例はございません。そもそも許可申請自体がありません」との回答が得られたのだった。
環境省、ならびに環境局の回答を考慮すると、今回のトラバサミがいかに許しがたい存在であったか、改めて感じるというもの。では、実際に人間・動物がトラバサミにかかってしまうと、どのような被害が想定されるのだろうか。
こちらの疑問を鳥獣のエキスパートらに尋ねたところ、「日本鳥獣被害対策協会」からは「想像できるのではないでしょうか」という、反応に困る回答が。「東京都猟友会」からは回答が得られず、こうした業界で「トラバサミ」の話題はタブーなのか…? という考えが頭をよぎってしまった。
だが「大日本猟友会」より紹介を受け、愛知県に店舗を構える「日本唯一の捕鳥獣器具専門店」である「中京銃砲火薬店」に打診したところ、トラバサミの恐ろしさが明らかに。
同店の担当者は「人間がトラバサミに挟まれた場合、手足の指は簡単に折れてしまいます。足の先が千切れてしまった鳩などを目にした人もいるかと思いますが、そうした事例はトラバサミが原因である可能性が高いです」「その名前の通り、虎をも捕まえられる非常に危険な猟具です」と具体例を挙げつつ、その威力について説明してくれたのだ。
そもそも、同店では「ギザギザの歯」がついたモデルの製造・販売自体を行っておらず、トラバサミ販売の際は「緩衝材とセット」という点を徹底しているという。
万が一トラバサミを発見した場合は、決して興味本位で触れたりしないよう、改めて注意を呼びかけたい。