蚕の遺伝子組み換えた「スパイダーシルク」誕生 環境にやさしい繊維に期待広がる
中国の科学者たちが、絹糸ではなく蜘蛛の糸を作る蚕の研究で、新素材「スパイダーシルク」を作り出した。
中国の研究チームが、蚕に遺伝子組み換え作用を加え、蜘蛛の糸を生成する研究に成功。製品開発段階になれば、医療、航空分野など多方面に適用できると期待されている。『NewsWeek』が伝えた。
■強靭な「スパイダーシルク」
中国の東華大学の研究チームが、遺伝子組み換え技術で蚕から蜘蛛の糸を生成する方法を見出した。
蚕が作るシルクも蜘蛛の糸も、ともにタンパク質からできている天然繊維だ。蜘蛛の糸は非常に軽量で伸縮性や抗菌性に優れている。
また鉄に匹敵するといわれるほど強度が高く、「スパイダーシルク」は防弾チョッキに使用される繊維の6倍ほど強靭だという。
■用途はさまざま
環境にやさしい天然素材「スパイダーシルク」は、しなやかで強靭な性質を生かせる用途が期待されている。蜘蛛の糸は、実はこれまでにも抗菌性に優れた医療素材として包帯に製品化されてきた。
繊維をフイルム状に加工する技術の開発や、3Dプリンターで医療器具をつくる試みも進められている。また研究チームは、シルクに保護膜をかけ、紫外線や湿度などに強い繊維の研究にも取り組んでいるそうだ。
■蚕と蜘蛛の遺伝子組み換え
研究者たちは、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術といわれる方法を用いている。
これは、最初に蜘蛛の遺伝子からタンパク質を生成する情報だけを切り取り、蚕の遺伝子に組み込む。その後、改変された遺伝子を蚕の卵子に注入するという方法だ。
この研究でキーとなったのが、局在化による改変蚕の確立だったという。蚕の最小基本構造モデルを生成したことで、蜘蛛糸のタンパク質情報が正確に継承され、シルクのように紡げる糸ができた。
■環境にやさしい天然繊維
東華大学生物科学・医工学部の博士課程候補者ジュンペン・ミー氏は、「蜘蛛の糸は合成繊維に代わる環境に優しい繊維」「マイクロプラスチック汚染やCO2排出を削減する持続可能な解決策」と話す。
「スパイダーシルク」は、衣服などの日用品だけでなくスマート素材、航空宇宙技術や生体医工学など、さまざまな分野において大規模商業化が展開されると予想されている。
・合わせて読みたい→豚の心臓を人間へ移植する2例目成功 史上初受容者が元受刑者だった事実に波紋
(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)