帝王切開出産で手術器具を患者に置き忘れ? 「医療ミス」認めた病院が謝罪
帝王切開による出産後に、慢性的な腹痛に悩まされた女性。その原因は、体内に巨大な医療器具が残されるという病院の医療ミスだった。
ニュージーランドで帝王切開によって出産した女性が、産後18カ月以上も腹痛に苦しんでいた。何度も医者に診てもらっても原因はわからなかったが、ついに衝撃的な事実が明らかになったという。
女性の腹部から取り出されたのはいったい何なのか。驚きの出来事を、『US TODAY』や『CNN』などのメディアが伝えている。
■帝王切開出産後に激しい腹痛
2020年にオークランド州の病院で、ある女性が帝王切開で無事に子供を出産。ところが、術後から激しい痛みを伴う腹痛に襲われた。
女性は腹痛を医師に相談し、何度も病院を訪れることになった。医師はレントゲンを撮り腹部の診断をするものの、特に異常は見られなかったという。
しかし女性は、このあと18ヶ月もの間この腹痛に苛まれることとなった。最終的に腹部の異常が発見されたのは、CTスキャンによる検診でだったそうだ。
■手術で一体何が起こった?
ニュージーランドの保健・障がい者委員会がまとめた報告書では、女性が帝王切開による出産を行った日、外科医をはじめ看護師や麻酔技術者を含む10名以上の医療スタッフが携わった。
女性は胎盤が子宮の開口部を覆う前置胎盤と診断されていたため、予定帝王切開を行ったと当時の医師は説明している。
このような手術の際に使用されるのが、円筒形のツール「アレクシス・レトラクター(AWR)」。なんとこの直径17センチにも及ぶ皿のようなAWRが、女性の体内に残ったままになっていたのだ。
■気づかなかった理由
手術中、準備してあったAWRは女性には小さかったため、急きょ大きなサイズを用意することに。そこで看護師が滅菌室から新たに持ち出して、手術は続行された。
手術では、使用する器具はすべて数えられる。だがAWRは本来手術用のパイプのような役割をするため、手術器具の個数には含まない。またAWRの半分が患者の体の外に出ているため、体内に残ることはないという。
この異例の医療ミスは、補助的な役割のAWRが計算に入っていなかったことや、サイズ変更による個数の確認が不十分になってしまったことが原因とみられている。
■医師会が女性に謝罪
病院側は、オークランドの医師会の代表を通じて医療ミスを認め、女性に対して謝罪した。
グループ運営のディレクターを務めるマイク・シェパード博士は、声明で「患者さんに起こったことに対して、どれほど申し訳なく思っているかをお伝えしたい。また彼女とご家族に与えた影響の重大さを認めます」と述べている。
また「倫理的またプライバシー上の理由から、個々の患者のケアの詳細については控えますが、見直しをしています」「システムとプロセスが改善され、同様の事故が再発する可能性を軽減します」「委員会の報告書の勧告を認め、実施に向けて取り組んでいます」とも述べた。
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(取材・文/Sirabee 編集部・本間才子)