『君たちはどう生きるか』に込めた映像&音響の最新技術 その出来栄えに宮崎駿監督は…

映画『君たちはどう生きるか』で採用された最新の映像&音響技術。スタッフが苦労重ねた完成映像を見た宮崎駿監督は…。

君たちはどう生きるか

映画『君たちはどう生きるか』で映像を担当したスタジオジブリ執行役員・奥井敦氏と、同じく音響を担当したスタジオジブリ・古城環氏が22日、同作で採用されたDolbyAtmos(以下ドルビーアトモス)、DolbyCinema(同ドルビーシネマ)の魅力について記者会見で語り、「没入感ある作品に仕上げられた」と振り返った。


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■ドルビーシネマ、ドルビーアトモスとは?

君たちはどう生きるか

7月14日に公開され、話題を呼んでいる宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』。

本作は通常版に加え、館内のあらゆる方向から音を発生させる立体音響システム「ドルビーアトモス」版、さらにはドルビーアトモスの音響効果に加え鮮明でハイクオリティな映像で表現するHDR技術・Dolby Vision(以下ドルビービジョン)が追加された「ドルビーシネマ」版が上映されており、いずれも音響、映像ともにレベルアップしたものとなっている。

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■宮崎監督に推薦したところ…

スタジオジブリ・奥野敦氏

ドルビーシネマで使用されている映像技術・ドルビービジョンを採用したきっかけに触れた奥井氏は「以前はフィルムで映像を作っていましたが、今はデジタル。当時は『透過光』という多重露光の技術で光を表現していましたが、デジタルになると光がしっかり残らなくなってしまうんですね。画面では光っていても、ある階調からその表現ができなくなるんです」と技術面での課題を解説した。

その上で、「2014年に公開した『思い出のマーニー』制作時、(明暗階調が広い)ドルビーシネマの技術を知りまして、ロサンゼルスのシアターまで見に行った。その時、黒の締まり、ハイライトの表現に衝撃を受けたんです」と回顧。

帰国しテスト映像を宮崎駿監督に見せたところ「気に入ってもらえてね。次、やってみようとその場で決まったのです」(奥井氏)と明かした。


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■『アーヤと魔女』に隠されたミッション

スタジオジブリ・古城環氏

そんな経緯を経て、スタジオジブリの3DCG作品『アーヤと魔女』(2021年公開)では、同社初のドルビーシネマ版が制作された。

古城氏は、「この時点で、『君たちはどう生きるか』の制作は始まっていましたから、新作で大事故を起こすより、この作品(アーヤと魔女)で実績づくりという感覚でした。ここでしっかり成功させれば次回作にも採用できる。そういう意味では、『アーヤと魔女』は壮大な実験場だったんです」と裏話を明かす。


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■宮崎監督の反応は…?

君たちはどう生きるか

『君たちはどう生きるか』でも、その幅広い表現が存分に生かされている。

「アオサギが太陽から迫ってくるシーンや、冒頭の暗いシーンなどは、ドルビーシネマ版だと見せたい明るさや暗さが表現できている。作りたい映像の幅が広がった。広いダイナミックレンジでの制作は、今後必須になると感じています」(奥井氏)、「ドルビーアトモスにしたことで、より映像が自然にリアルに見える感じがあったのではと感じます。横からしか聞こえなかった環境音などが、上からも来ることによってその場にいる感覚がより強まった」(古城氏)と両氏。

しかし、意外にも完成版を見た宮崎監督は、「『…うん』と言ってうなづいたくらいだったかな(笑)」(古城氏)というそっけないものだったらしく、長年付き合いのある奥井氏は監督の寡黙な性格を鑑みた上で、「表現に満足している(証拠)。そう信じています」と笑っていた。


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■執筆者プロフィール

キモカメコ佐藤:1982年東京生まれ。『sirabee』編集部取材担当デスク。

中学1年で物理部に入部して以降秋葉原に通い、大学卒業後は出版社経て2012年より秋葉原の情報マガジン『ラジ館』(後に『1UP』へ名称変更)編集記者。秋葉原の100店舗以上を取材し、『ねとらぼ』経て現職。コスプレ、メイドといったオタクジャンル、アキバカルチャーを精力的に取材中。

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(取材・文/Sirabee 編集部・キモカメコ 佐藤

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