ジブリ新作『君たちはどう生きるか』、公式パンフに記された「宮崎駿監督の葛藤」
ヒットを記録しているジブリ最新作『君たちはどう生きるか』の公式パンフが発売に。そこに書かれていた内容とは…？
異例の“事前告知無し”で封切りとなったスタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』（宮崎駿監督）。公開から約1か月経ったいま、映画館ではようやく公式パンフレット（プログラム）が販売となったが、その中身とは？
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■情報明かさぬスタイル
2013年公開の『風立ちぬ』以来、宮崎監督の長編アニメとしては10年ぶりの新作となった『君たちはどう生きるか』。ストーリーはおろか、キャスト、主題歌まで一切明かさないというスタイルで7月14日に公開され、大きな話題を呼んだ。
通常なら各映画館で力の入ったプロモーションを行うものだが、各館、本作に至ってはどの入口が案内するために渋々ポスターが貼られただけというじつに簡素な状況。そんな中、公開から約1か月たった8月11日、ようやく公式パンフが販売となったのだ。
■難解な内容だからこそ公式パンフ…なのだが
同作は、非常にダイナミックで奥深いストーリーながら、時に難解な展開があり、「1回見ただけではすべてを理解できない」と嘆くファンの声も少なくない。公開初日に見てきた記者は、その面白さを味わいながらも、あのシーンはどんな背景があったのか、どんなメッセージを伝えたかったのか…と後々考えることが多かった。
通常、その“答え合わせ”ができるのが公式パンフなのであるが、先に申し上げると同誌はその役割を果たしていない。しかし、それ以上に買っておくべき魅力が詰まっていた。
■ほとんど「場面カット」
ページをめくると、簡単なあらすじの後、本作ストーリーに深く絡んでくるアオサギの「場面カット（アニメ絵）」が見開きで登場。本誌は表紙周りを除く全36ページで構成されているが、そのうちじつに27ページ分が文字の一切入っていない「場面カット」オンリーなのである。
これを読めばストーリーのすべてを理解できる…という浅はかな考えを抱いていた記者は、ここで自分の愚かさに気付いた。情報を隠しに隠した事前プロモーション同様、パンフも「すべて語らず」スタイル。宮崎監督の狙いにまんまとはまってしまったのだ。
もちろん、パンフレットの定番であるキャラ紹介やキャスティング、声優陣のコメントなども一切ない。記者は美麗な場面カットをじっくり見ながら、映画でみたシーンを回顧しつつ、あれこれ空想を膨らませていった。これはこれで楽しい。あのセリフはここに繋がっていたのかな、あのキャラはなぜ主人公を助けたのか…などなど思いを巡らせる。
■宮崎監督の葛藤が
そんな中でも、注目すべきページがある。宮崎監督が2016年7月に記した「長編企画覚書」という制作始動前のメモ書きだ。
そこには監督自身、前作で引退宣言したにも関わらず、また制作意欲が湧き出ているという葛藤がリアルに表されており、その言葉一つ一つに重みや熱意が込められていて興味深い。
当初はもっと早く完成させる予定だったらしく、公開予定を2019年に設定し「小生78才生きてるかな？」と記していた宮崎監督。しかし、制作が長引き、同ページの最後には「※3年とあるが、実際には7年の歳月を要した」という自虐な一文も。そんな監督の心の内がわかる、貴重な資料だと感じた。
■執筆者プロフィール
キモカメコ佐藤：1982年東京生まれ。『sirabee』編集部取材担当デスク。
中学1年で物理部に入部して以降秋葉原に通い、大学卒業後は出版社経て2012年より秋葉原の情報マガジン『ラジ館』（後に『1UP』へ名称変更）編集記者。秋葉原の100店舗以上を取材し、『ねとらぼ』経て現職。コスプレ、メイドといったオタクジャンル、アキバカルチャーを精力的に取材中。
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（取材・文／Sirabee 編集部・キモカメコ 佐藤）
