超ブラック化が改善されない霞が関官僚、進む公務員離れに「週休3日制」導入案も…
【舛添要一『国際政治の表と裏』】キャリア官僚の志望者が激減。国会が始まれば朝5時から打ち合わせ、深夜まで残業というブラックな環境…大臣経験者の筆者が内情を解説する。
霞ヶ関のキャリア官僚というのは、かつては優秀な若者が目指す輝かしい就職先であった。私は、1967年に法学部に進学する前提で東京大学(文科1類)に入学した。高校の先生も、周囲の人たちも、卒業後は霞ヶ関に就職し、できれば大蔵官僚になることを期待したものである。
「末は博士か大臣か」と言われたように、学問の世界で大成するか、役人を経て政治の道に転身し、政治指導者となることが理想とされたのである。私は、母校で教鞭をとった後、官僚を経験することなく政治の世界に足を踏み入れ、大臣になった。50年前の感覚だと、正規の軌道を走らなかった例外である。
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■国家公務員志望者が激減
ところが、今やキャリア官僚(総合職)志望者が激減している。今年の総合職試験の申込者は1万4372人で、過去2番目に少ない。2年前の2021年度が最低で、1万4310人であった。2012年には2万3881人だったので、この10年で激減している。
また、中途退職者の数も増えている。キャリア官僚で、採用後10年未満で退職した職員の数は、2018年が116人、2019年が139人、2020年が109人と、3年連続で100人を超えている。
まさに危機的な状況で、キャリア官僚という仕事がそれほど魅力のないものになったということである。
■人事院は週休3日制を提案
この危機を打開するために、人事院は、フレックスタイム制を活用して、週1日を限度に、土日曜日以外の日に休みをとって、「週休3日制」を可能にするべきだと国会と内閣に勧告した。休んだ分は、他の勤務日の労働時間を延長することで、4週間・155時間という総労働時間を維持するという。人事院は、法改正などをして2025年から実施することを提案している。
この提案は評価してよいと思うが、実は、国会も週休3日制にならないかぎり、実現はほぼ不可能である。キャリア官僚は、毎日深夜まで仕事をしている。その最大の理由は、国会対応である。
■国会議員の質問に対する答弁準備
国民は、本会議や予算委員会における審議をテレビ中継で見るが、そこに至る過程についてはあまり知らないので、国会議員、大臣経験者として内情を説明しよう。
本会議や委員会で政府に質問する番が回ってきた議員は、質問内容を考える。考えがまとまったら、国会担当の役人にそれを伝える。これを「質問通告」という。これは、質問する日時の1日半前までに行うことになっているが、多くの議員がこの期限を守らず、数時間前、ひどい議員になると直前ということもある。
役人のほうで、議員のところに赴き、質問内容を尋ねるが、これを「問とり(質問取り)」という。1日半前までに質問が分かれば、官僚は深夜まで働くことはなくなる。
なぜ質問通告をするかというと、細かい統計数字などを求める場合、どんなに優れた大臣でも即座に答えられないからで、事前に官僚が用意すれば国会の審議がスムーズに進む。政策の趣旨などの最重要事項に大臣質疑の焦点を当てることが可能となる。