『君たちはどう生きるか』の鳥を求めて… 東京の“灼熱地獄”にたたずむ一羽を発見
『君たちはどう生きるか』メインビジュアルに描かれたアオサギ。その姿を追って記者は東京の奥地に分け入った。
公開されて以降、ネット中心に話題を呼んでいるスタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』。14日の映画公開から現在に至るまで公式から何一つ情報が出ていないが、唯一公表されているのが鳥の描かれたメインビジュアルである。その鳥を追って、記者は東京の奥地に分け入った。
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■あの鳥の正体は…
同作で描かれた一羽の鳥。黄色いくちばしに黄色い目、そして青と白の体色。くちばしの中には別の目があり、今にも飛びかかってきそうなじつに不気味な印象を受ける。
この鳥の正体はアオサギである。翼を広げると170cmほどもあり、国内にいるサギの中でも最大級の大きさといわれる。また非常に攻撃的かつ、他の鳥から獲物を奪う狡猾な性格としても知られる。
…そんな情報をネットで見つけ「なんて恐ろしい鳥」と震えあがった記者は、アオサギを追うため都内近郊を探すことにした。
■近隣動物園にアオサギは無し
記者はこれまでアオサギを見たことが無い。家の近くに川や干潟などがなく、見かけるタイミングもなければ興味もなかった。
もしかすると『君たちはどう生きるか』公開でアオサギのいる動物園が注目されているのかもと、東は東京・上野動物園から西は静岡・掛川花鳥園まで、複数のテーマパークに問い合わせしたがアオサギの存在は確認できなかった。
中には「ほかの鳥の餌を狙いに時々やって来ますが…」というこぼれ話もあったが、そもそもどの施設も飼育はしていないもよう。そこで記者は、東京・大田区にある「東京港野鳥公園」に足を運んだ。
■酷暑の中、森を進む…
豊かな緑に包まれた東京港野鳥公園は、敷地内に複数の野鳥観察小屋や専用デッキがあり、池や干潟、林に飛来する鳥をウォッチングすることができるスポット。この知る人ぞ知る秘境に、伝説の怪鳥・アオサギは現れるかもしれない。
この日は37度近い猛烈な暑さが東京を襲っており、現地に着いた瞬間から汗が噴き出した。地面には焼け焦げたように絶命したミミズが大量におり、漆黒のカラスの集団が記者をにらみつけていた。
敷地の中央には映画『ジュラシックパーク』に出てくるような「ネイチャーセンター」なる施設がある。
「日本野鳥の会」レンジャーが常駐している上、全面ガラス張りの展望スペースのほか、無料の望遠鏡、飛来スポットの中継モニターがあり、バードウォッチングには最適の場所だ。
■野鳥フリークには人気薄?
レンジャーの女性に「私は怪鳥・アオサギを追ってきました」と話を聞くと、一瞬戸惑いつつ「ああ、アオサギですね。頻繁に来ますよ。ほら、あそこにいます」と遠くの浅瀬を指さす。
そこにはダイサギやコサギ、カワウに混じってひときわサイズのデカい鳥の姿が。まさに宮崎駿監督が描いたアオサギである。思ったより全然早く発見してしまった。
双眼鏡を覗いていた一般男性は「アオサギは性格が本当に荒々しく執着心もすごいんですよ。時には他の鳥を攻撃したりするんです。え、ジブリ作品? あたしはまだ見ちゃいないけど、あんなアオサギが人気になるとは思えないねぇ(笑)」と記者に教えてくれる。野鳥フリークの中では全然人気がないようだ。
■簡単に撮影できちゃった
ネイチャーセンターからは遠すぎて撮影ができなかったが、数100m離れた観察小屋に移動し、見事撮影に成功。レンジャーと前出の男性に写真を見せると「これは確かにアオサギですよ」という。ミッションコンプリートである。
自信満々で会社に報告すると、上司から「はぁ? わざわざ撮りに行ったの? 皇居とか不忍池、多摩川とかに普通にいるよ」と返答があった。
幻の鳥ではなかったのか…と呆然自失のまま帰り道にあった洗足池(同じく東京・大田区)に立ち寄ると、普通に池のほとりにアオサギが一羽立っており、記者をずっと見つめていた。全然レアな鳥じゃないと知ったのはこの時だった。
…そんな身近な鳥・アオサギだが、映画公開となった今夏、お子さんの自由研究対象としてバードウォッチングにチャレンジするのも大変オススメである。
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(取材・文/Sirabee 編集部・キモカメコ 佐藤)