価格バク上がり中の卵、ひと工夫加えた「商品選び」で断然安く買えてしまう…

【鈴木貴博『得する経済学』】卵の価格が高騰中。マクロ経済環境の仕方のない要因のせいだが、それでもミクロ経済に詳しければ卵をお得に買うことができたりする。

2023/07/16 04:15

トリュフしょうゆ

「本当だ。お父さんの言うとおり、この卵はコスパがよくなっている!」

うちの娘ももう社会人で、しかも経済に深くかかわる仕事をしています。そしてその娘からこのように尊敬されることが起きたりします。

今日はたまたま父の経済評論家としての偉大さを伝えるよい機会に遭遇しました。その機会とは、ふたりで卵を買いにいったときのことです。今回はそんなエピソードを通して、「卵を安く買う方法」をご紹介します。

【関連記事】鈴木貴博氏連載『得する経済学』バックナンバー


関連記事:卵を使わない卵料理、その味に驚き… 人類を救う「潜在能力」を秘めていた

■「物価の優等生」は過去の話…

卵の価格は今、かつてなかったほどに高騰しています。直近の卵の卸売価格はMサイズ1kgで350円前後。2020年頃でしたら同じ時期に160円だったわけで、この3年で卵の仕入れ価格は倍以上です。10個入りの鶏卵パックの場合、全国のスーパーの平均価格は3年前の217円から305円へと値上がりしました。

あまりの価格の高騰に、飲食店で卵メニューを大幅に値上げしたり、場合によっては休止したりと、世の中でもちょっとした大騒ぎになっています。

関連記事:高騰中の卵を使ってあえて“リッチな卵かけご飯”を作ったら… 新感覚すぎてビビった

■物価の優等生だった卵の価格が高騰中

この卵価格の高騰、実は日本だけの現象ではありません。ロシアによるウクライナ侵攻の余波で鶏の飼料となるとうもろこしなどの価格が世界的に高騰しています。それに加えて鳥インフルエンザの発生で国内でもかつてなかった頭数の鶏の殺処分がおこなわれました。この鳥インフルエンザも日本だけでなく北米やヨーロッパ、インドにまで広がっています。結果として卵の供給が大幅に減っているのです。

鳥インフルエンザは国内の養鶏場では4月8日以降、発生していないので、鶏の頭数はこれから回復基調に戻ることが期待されますが、それでも頭数が以前の水準に回復するまでには一年かかると推定されています。ですから卵価格の高騰は当分続きそうです。

さて、そこで冒頭のシーンです。あるスーパーで卵の10個入りパックが278円で売られていました。
「これが安いからこれを買って帰ろうか?」という娘に対して、「お父さんはもっとコスパがいい卵を知っているよ」と話して、その場では卵を買うのを断念させました。


関連記事:なかやまきんに君、アメリカ高級スーパーの値段に衝撃 「インフレヤバすぎ」

■卵を安く売るにはどんな工夫がありうるか?

「ちょうどいい経済知識の勉強になるから、このあとお父さんともう一軒、買い物に寄って帰ろう」と話してそのスーパーは後にしたのですが、道中親子でこんな話をしました。

そもそも安く卵を売るためにはどんな工夫ができるでしょうか? 大手スーパーのように大量に仕入れる契約をすることで契約農場から安く卵を仕入れる約束をしてもらう。これが基本です。さきほど卵を278円で売っていたスーパーもそのひとつで、東京の都心部ではこの工夫を前提にした場合の卵価格の底値はほぼその水準のようです。

しかし卵を安く売るためにはもうひとつやれることがあります。それが出荷にあたってできるだけ手間をかけないことです。


関連記事:ChatGPTが考える“卵かけご飯”が斬新すぎる 簡単に作れるのに旨味がすごい…

■「JAS規格」では卵の大きさが定められている

たまご

卵のサイズはJAS規格でSSからLLまで6段階に分かれています。通常はそれを農場で選別して販売します。MサイズとLサイズでは12gも大きさが違います。別の言い方をすると1割も大きさが違います。ですからちゃんとしたお店で卵を買う場合「Mサイズ10個パック」のようにきちんと選別した卵の大きさを表示して売っているものです。

一方でこの選別を最小限でしかやらなければ選別の手間が省けます。わたしが選んだのはこの方法で卵を販売しているお店。

そこで娘とふたりで向かったのが家からほど近いところにあるローソンストア100。ここで売られている「愛たまご」という商品は10個パックが258円と地域最安値なのですが、実は秘密はそれだけではありません。パッケージを見ると「サイズは52g以上、76g未満」と表示されています。つまり重さが最大で46%も違うばらばらなサイズの卵が入っているのです。


関連記事:リュウジ氏考案の“生卵のアヒージョ”が最高 簡単に作れて大満足すぎる

■ランダムなら必ずバラツキがある

たまご

ランダムに卵を入れている分、手間がかからずコストが安くなる。あとはそのランダムさを逆手にとればいいのです。父の教えはこのようなものです。

「いいかい。パッケージを横から見ると小さいたまごと大きいたまごが無作為に入っているのが見えるよね。そこで左右をみて大きなたまごが4つ以上入っているパッケージをみつけたらそれを買えばいいんだよ」

この教えに従って娘が卵のパッケージを手にとるとまさにその通り。パッケージごとに入っているたまごのサイズがまちまちなのです。そして3~4パックを比較をすると必ずあるのです…そう、大きなたまごがたくさん入っているパックが。

写真は今回買って帰ったたまごです。明らかにLLサイズと思われる卵(写真最上段)が4個。それ以外もおおむねMサイズ以上の卵が6個。これならそこそこお買い得ではないでしょうか。今回は経済知識が深いと娘に尊敬されるというお話しでした。


関連記事:『あさイチ』卵パックで作るシューマイが話題に 実際に試してみた

■著者プロフィール

鈴木貴博

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。

今週は「上手な卵の買い方」についてお届けしました。

・合わせて読みたい→卵を使わない卵料理、その味に驚き… 人類を救う「潜在能力」を秘めていた

(文/鈴木貴博

鈴木貴博著『日本経済復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する』【Amazon】