市川猿之助の”一家心中”事件 弁護士が語る「スキャンダル報道の問題点」とは
謎が多い市川猿之助一家の”心中”事件。両親が亡くなった当日に発売された週刊誌スキャンダル報道との関連を指摘する声もあるが…。
歌舞伎界だけでなく世間に衝撃を与えた市川猿之助一家の事件。猿之助の父・市川段四郎さんと妻が死亡し、司法解剖の結果、向精神薬中毒死の可能性が報じられた。
猿之助も意識が朦朧とした状態で病院に搬送されたが、現在は退院している。
■死亡当日に週刊誌に記事が掲載
歌舞伎の名門・澤瀉屋を率い、テレビドラマでも活躍する猿之助とその両親が、死を選ぼうと思い至ったのか。生き残った猿之助の証言が一部漏れ聞こえてくるものの、両親の本当の思いは、今となっては知る由もない。
しかし、関連性が強く疑われるのは、両親の死亡が判明した18日に発売された週刊誌でのスキャンダル報道だ。その真偽はさておき、もし報道が2人の尊い命を奪う結果につながってしまったとしたら、後味の悪い思いを抱いている人もいるだろう。
こうしたスキャンダル報道の問題点について、週刊誌等の報道対応に詳しいレイ法律事務所の山本健太弁護士に話を聞いた。
■弁護士が語るスキャンダル報道の問題点
山本弁護士は、「もちろん、すべての週刊誌等による取材や記事がそうだというわけではありませんが…」と前置きした上で、スキャンダル報道一般について、5つの問題を挙げた。
①真実とは異なる内容であったとしても、「ある関係者によると」などとして、真実であるかのように読者に印象を与える内容を書かれてしまう場合があります。中には、記事の対象者に事実を確認することなく、そのような記事が書かれてしまうこともあります。
②また、取材方法も、事前のアポなく自宅付近などで待ち伏せて突撃取材をされ、勝手に写真を撮られた上に、それを無断で掲載されてしまうこともあります。
③さらに、取材においては、質問状による取材がなされることもありますが、回答期間が短期間であることも多く、回答しないと「回答がないこと」自体を取り上げ、それをマイナスのイメージに使われて記事を書かれることもあります。
④取材に対して回答したとしても、回答内容を一部切り抜かれ、偏った情報が報道されることもあります。
⑤その他にも、最近では、ニュースの配信会社からも記事が配信、拡散されるため、記事の対象者がさらに社会から叩かれることもあります。
■求める読者の存在も
言論・報道の自由や国民の知る権利がある一方で、著名人にもプライバシー権がある。また、スキャンダルを求める読者の存在も、ビジネスである芸能メディアがそうした取材に注力する要因だろう。
もし、報道が引き金となって今回の事件に至ったのだとしたら、メディアも読者も自らに問いかける必要がありそうだ。
■主な相談窓口
・いのちの電話
ナビダイヤル=0570-783-556(10時~22時)
フリーダイヤル=0120-783-556(16時~21時。毎月10日は8時~11日8時)
・日本いのちの電話連盟(https://www.inochinodenwa.org)
■執筆者紹介
タカハシマコト:ニュースサイトSirabee編集主幹/クリエイティブディレクター
1975年東京生まれ。1997年一橋大学社会学部を卒業。2014年NEWSYを設立し、代表取締役に就任。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。カンヌライオンズシルバー、TCC審査委員長賞、ACCシルバーなどの広告賞を受賞。
著書に、『ツッコミュニケーション』(アスキー新書)『その日本語、お粗末ですよ!』(宝島社新書)。
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(取材・文/Sirabee 編集部・タカハシマコト 取材協力/レイ法律事務所・山本健太弁護士)