G7広島サミット、3日間終え閉幕 ゼレンスキー大統領“対面”参加がハイライトに
【舛添要一『国際政治の表と裏』】G7広島サミットが閉幕。ゼレンスキー大統領の参加で、G7の結束が強化され、ウクライナへの武器支援も加速化される。今後の課題とは…。
■中国は反発
さらに中国に関しては、ウクライナ戦争の停戦に向けてロシアに対して圧力を行使することを求めた。さらに、中国の強引な海洋進出を牽制し、「一方的な現状変更の試みに反対する」と強調した。
以上のようなG7の主張に対して、中国は、これを内政干渉だとして反発している。ロシアや中国にしてみれば、G7の中の核保有国、つまり英米仏の核戦力については不問に付したままで、自分たちのみに向けて要求を突きつけるのは説得的ではないという反発である。
「先ず隗より始めよ」という言葉があるように、核保有国が率先垂範しなければ、核兵器のない世界の実現は困難である。
■日韓関係のさらなる改善へ
広島サミットでは、ウクライナ、中国、核軍縮のほか、北朝鮮、経済安全保障、気候変動、エネルギー問題、食料安全保障、保健・医療、ジェンダーや人権、デジタル・生成AIなどについて幅広く議論された。まさに現在の人類が直面している課題について討議されたと言えよう。
そして、特筆すべきは、5月21日の早朝、韓国人原爆犠牲者慰霊碑に日韓首脳が献花したことである。このような取組が、日韓関係のさらなる改善につながる。シャトル外交の成果も上がりつつある。官のみならず、民間の交流もさらに活発にしていくことが必要である。
さらには、日米韓首脳会談が開催され、3カ国の連帯を示したが、バイデン大統領は、ワシントンでも3カ国首脳会談を開くことを提案した。
■今後の課題
以上のように、広島サミットは、総じて予想以上の成果を上げたということができるが、ウクライナ停戦や核軍縮を早期に実現できるのか否かということが問題である。
G7の結束は誇示できたが、民主主義陣営と権威主義陣営の対立は深まるばかりである。グローバルサウスなど新興国の経済発展に伴い、世界経済におけるG7の重みは減っている。
今後も、G7が世界をリードできるのか、厳しい現実が待っていることを忘れてはならない。
■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、広島県で開催された「先進7カ国首脳会議(G7サミット)」をテーマにお届けしました。
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(文/Sirabee 編集部・舛添要一)