PTA廃止した小学校、その活動内容に目を疑う これは保護者も参加したくなる…
東京・嶺町小学校ではPTAを完全廃止した。PTAに代わる活動内容が何ともユニークで…。
「PTA役員決め」。このワードを聞いただけで、思わずため息をついてしまう人もいるのでは。新学期早々、くじ引きやじゃんけんで役員に抜擢され、ブルーな気分に陥った保護者も少なくないだろう。
何かと面倒なイメージの強いPTA。そんなPTAを廃止した学校の取り組みが画期的で…。
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■PTAを廃止した学校
PTAの活動は学校によって異なるが、多岐にわたる。子供達の登下校時の見守りや運動会やバザーなど学校行事のサポート、地域の防犯活動、広報などだ。
PTAによる人間関係も生じるため、「面倒くさい」「やりたくない」と敬遠してしまう人も少なくない。近年は、PTA代行業者に依頼したり、制度そのものを見直す学校も増えている。
東京・大田区立嶺町小学校もその一つ。同校は、2013年度に従来のPTAを廃止し、1年の準備期間を経て、15年度から新たな制度「PTO」に移行した。
PTAをなくして、どのように変わったのだろうか。嶺町小学校PTOに取材を申し込んだところ、二つ返事で了承してくれた。
■PTO開設の経緯
PTO開設当初から関わり、21年度に第5代団長を務めた星義克さんに話を聞いた。PTOは「保護者と先生による楽しむ学校応援団」で「Parent Teacher Organization」の略。「O」には応援団の「おー!」という意味も込められているそうだ。
もともと嶺町小学校も、一般的なPTA活動を行っていた。廃止に至った背景として、星さんは「4月の保護者会の委員会で沈黙が生まれたり、前例踏襲の行事が行われていました。当時の会長が保護者の負担に感じる部分をなくそうと考え、PTAを廃止したんです」と振り返る。
PTAに「ブラック」なイメージが付きがちな原因も考えたという。
「PTA規約の中には、『会員はすべて平等の権利と義務を有する』といった文言が入っていることが多いです。PTAは家庭環境がどうであれ、『子供のための義務だから役員や係をやらないといけない』と思われがちです。私達は、『やらないといけない義務感』『やらさせれている強制感』『(自分はやらされているのに)やらない人がいる不公平感』の3本の『や』をなくすことから始めました」(前出・星さん)。
■この教師達、ノリノリである…
PTOの大きな特徴として、「ボランティア制」が挙げられる。
「その活動に必要なサポーターを募集する形で運営しています。例えば、運動会の安全管理や受付などで人出が必要になったら、その時サポートできる人を募集して成り立っています。当番のように一定期間やるものではないので、長い間お手伝いされる方もいれば、何もやらない人がいてもOKという考えです。会費を払っていただければ自由意志でやっていただけます」(前出・星さん)。
従来のPTAは決められた行事があって、教師と保護者はそれをこなすなど、受け身のイメージがある。しかし嶺町小学校のPTOでは、保護者からやりたい企画を提案する「夢プロジェクト」を実施しているという。
19~22年度に同校の保護者グループ『パパさんず』のメンバーや校外副団長として活動し、今年度からPTOの第6代団長を務める久米雅人さんは、「夢プロジェクト」の詳細を説明する。
「PTO設立当初から、保護者や先生が一丸となり、逃走者とハンターに分かれて鬼ごっこをする人気番組『run for money 逃走中』(フジテレビ系)を模した企画を実施しています。先生がスーツを着て、サングラスを付けてポーズを取ったポスターも作るんですよ(笑)」(久米さん)。それにしても、この教師達ノリノリである…。
その他にも、商店街に芝生と遊び場を設けて子供達が遊ぶ「ストリートキャンプ」やハロウィンに多摩川を仮装して歩く「ハロウィンウォーキング」、街中の掲示板にクイズを貼って子供達がクイズの回答を書きながら歩く「町たんけんクイズラリー」など、時には地域と協力したイベントも行っている。
■保護者の反応は…
もちろん、運動会やバザーのように事前に決められた学校行事も行うが、誰でもやりたい企画を積極的に提案できる仕組みは画期的である。PTOに移行して10年近く経つが、保護者からも好評のようだ。
「やりたい人がやる形なので、負担に感じるという声はありません。参加できない方からも『いつもありがとうございます。できる時に参加させてください』といった声をいただいています。また、他の学校から転校してきた保護者の方や4月に新しく異動してきた先生は、PTAとの違いに驚くことも多いんですよ」(前出・久米さん)。
保護者、教師共に伸び伸びと活動している印象を受けたPTO。この仕組みを導入する学校が増えてもいいかもしれない。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)