電車内に「刃物持った不審者」 制圧からトリアージ…一連の訓練見たリアルな感想
京急が「列車内刃物不審者への対応訓練」を実施。現場で見学させてもらうと…。
■突然、男が刃物を…
今回の訓練は、京急川崎駅〜京急蒲田駅間で刃物を持った男性が暴れだし、乗客数名に襲いかかった…という、実際に他社線で起きた無差別刺傷事件を彷彿とさせるもの。以下、訓練の一部始終を紹介する。
電話の中で大声で通話する男、それを迷惑そうに見ていた乗客に対して「何見てんだよ!?」と激昂、その手には刃物が…。
止めようとした人、逃げようとした人、そして警察に通報しようとした人…次々と襲われ、倒れていく。
なんとか隣車両に逃げ出した乗客によって緊急ボタンが押され、車掌へ連絡が入る。
車掌は状況を把握すべく現場に急行し、ドア越しに車両を確認。手には防刃手袋をはめ、小型の防護盾を装備している。
■駅到着→警察が即対応
京急蒲田駅に到着後、車両にさすまたを持った警察が駆け込んで犯人をホームに追い立て、暴れるところを押さえつけて逮捕。
停車位置がずれて、ドアの半分がホーム柵と重なっているのが生々しい。
事件発覚後、即座に電車を停めるべきでは? と思ってしまいがちだが、警察や消防・救急を呼び、即座に対応できるように駅まで移動させるとのこと。
■負傷者の対応
犯人制圧・確保後、負傷者の救助を開始。怪我の具合でトリアージ札を取り付け、重傷者から対応していく。
駅ホーム上では車両や負傷者の状況、対応を即座に判断し、各所へ指示を出していく。
今回の訓練では「直ちに救命を行えば、救命が可能」な赤色(最優先治療群)が2名、「多少治療の時間が遅れても生命には危険がない」黄色(非緊急治療群)が1名、「ほとんど専門医の治療を必要としない」緑色(軽処置群)が5名の想定。
赤色の2人は担架、黄色は車椅子を使用し、ホームから搬送されていく。すべての負傷者への対応を完了し、訓練も終了した。
■もし、これが現実になったら…
今回、記者は事件の起きた車両に乗車したのだが、訓練とわかっているのに泣きそうになるほど怖かった。犯人の怒号や悲鳴を聞くと、一瞬「私も刺されるんじゃ…」と思うほど。
また、訓練では逃げようとして転んだ怪我人も想定されていた。慌てて逃げるから怪我人が増える、と頭ではわかっているのだが、これが現実に起こったら「通報しなきゃ」「助けなきゃ」よりも、「怖い、死にたくない」「なんとか逃げなきゃ」とパニックになるな…と痛感。
こうした本気の訓練を鉄道会社・警察・消防が連携して行ってくれているおかげで、不測の事態にも適切に対応してもらえる。そのことに感謝するとともに、私たちも「もし、万が一なにか起こったら」どうするべきなのか、一度考えてみたほうがいいのかもしれない。
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(取材・文/Sirabee 編集部・たつき あつこ)