タモリと桑田佳祐が憂う「新しい戦前」の背景 左派と右派の喧騒
タモリの「新しい戦前」と桑田佳祐の平和を歌う歌詞が響く昨年末。左派と右派の喧騒の整理と国際関係。
年末は、桑田佳祐が率いるバンドが『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)で注目され、タモリの「新しい戦前」という一言が騒がせた。今年の平和を憂う、2大天才タレントの影響力の意味について考察したい。
■時代遅れでないバンド
「紅白」では、収録VTRであったにもかかわらず、企画として登場した、桑田佳祐 feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎が大きな反響を呼んだ。
昔ながらのロックンローラーとして、桑田らは率直に平和をうたう「時代遅れのRock’n’Roll Band」を歌唱。結局、「桑田らは全く時代遅れでない」という多くの感想が上がった。
■平和をうたう歌詞が響く
桑田は昨年の『クローズアップ現代』(NHK総合)でもこのバンドを紹介し、またボブ・ディランの「風に吹かれて」をオリジナル訳で歌唱している。どちらも直接的に平和を訴えかける曲だ。
ネット上の一部の日本国民が大きく右傾化し、2013年に発表されたサザンオールスターズの「ピースとハイライト」は一部の層を騒がせた。
同じ直接的に平和を歌う曲にもかかわらず、昨年の桑田の平和を歌う曲はより多くの人々に響いたようだ。
■タモリの「新しい戦前」
『紅白歌合戦』の3日前の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)では、タモリが突然、「新しい戦前」というフレーズを一言残し、大いに話題となる。
「新しい戦前」という言葉を巡って、いわゆる「右」も「左」も我田引水する事態となった。左側は、「新しい戦前」をつくりあげる日本政府を批判する。右側は、タモリも言う「新しい戦前」に備えよと警告。
じつは、過去にタモリは「新たな資本主義」について語っている。タモリは基本的にはやはりリベラルな立場であり、少なくともバランスをとる立場と言えるだろう。
■複雑怪奇な「右側」と「左側」
本来「左」とはカール・マルクスからなる革新の立場であり、「右」とは保守的な立場だ。また、「リベラル」とは、平等的な自由主義の立場のことを指し、いずれも「平和」の概念とはほとんど関係がない。
経済次元からすると、「左」は資本主義を手放しにせず、ケインズ主義的な再分配、需要喚起を重んじる立場であり、「右」は市場主義、供給第一の立場とも言えるだろう。そのためか、「右」が構造改革を志向し、「左」がなぜか保守的な傾向はある。
それでもやはり安全保障には右も左もないはずだが、なぜか「右」が防衛力強化、「左」が平和憲法護持に分かれがちだ。