今年の『M−1』が画期的である理由 ウエストランドと山田邦子による変革

跳ね切らない今年の『M−1』を活気づけたのは、ウエストランド、ヨネダ2000、山田邦子だった。

■ウエストランド登場のお膳立て

最後に出てきたのがウエストランドであった。決勝終盤の場面では、やけに低い点数がつけられる展開も出現。山田邦子の柔軟な審査スタイルが、他の審査員にも伝播していた。

柔軟性を帯びていた「M−1」決勝終盤の展開に、より柔軟な漫才で勝ち上がる爆発的なスターが出てきてほしいところ。

「あるなしクイズ」のお題に見せかけて、毒舌につなげていく自由なスタイルの漫才がここで登場したのであった。


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■爆発的な毒舌漫才

爆笑問題・田中裕二のような小柄な身体から発せられるツッコミのような強い口調。そこに、爆問・太田光のような破壊願望が垣間見られる毒舌が組み合わされる。

漫才としての綺麗な構造よりも、佐久間宣行プロデューサーの人気のような、批判したいけれども批判しがたい対象を1人でもイジれば笑いとしては勝利という状況もピタリとハマった。

最終決戦では「大阪の笑い」と「M−1」自体に毒を投げかけるという、お笑い界のタブー的な対象に見事に斬り込んだことによる完全なる優勝だったのである。


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■鬱屈を吹き飛ばす

ウエストランドは一時期、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の隔週レギュラーに抜擢されていたので、いつのまにか「第七世代」らに抜かれてしまった鬱屈も視聴者には理解しやすい。

「コンプライアンス」という言葉が1人歩きし、SNSの「ムラ社会」が窮屈な中、ぺこぱが最終決戦に上がったに過ぎないだけの「人を傷つけない笑い」という、根拠のない風潮を吹き飛ばしてくれる痛快な優勝であった。

ウエストランドの所属事務所の代表で、度々「M−1」でも話題に出てきた爆笑問題の代理戦争に勝利したかのような、いわゆる関東芸人の為の史上画期的な「M−1」となったといえるだろう。

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(文/メディア評論家・宮室 信洋

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