W杯開催国カタールの光と影… 人権や環境問題などで批判される背景に「文明の衝突」

中東初のW杯開催で一気に盛り上がるカタール。その水面下では相容れない文明同士のぶつかり合いが。

2022/11/26 18:30

■厳しいイスラム教の戒律

カタールの街並み

イスラム教徒には守らねばならない戒律がある。豚肉を食べないことやアルコール飲料を摂取しないことである。そのため、サッカーの試合に集まった観客は、スタジアムでビールが飲めない。

キリスト教文明の西欧では、最近は人権意識が高まり、同性間の結婚などLGBTQを受け入れるのが当然になっている。受け入れない国は、人権意識の低い野蛮な国だという認識である。

しかし、カタールにしてみれば、イスラム教の教えに忠実に従っているのみで、宗教や文化が異なれば生活様式も異なるのは当然である。


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■文明の衝突

カタール側に立てば、ヨーロッパは傲慢であり、自らの考え方や文化や習慣を押しつけていることになる。「郷に入っては郷に従え」なのであり、スタジアムでビールを飲めないことを非難するほうがおかしいのである。

これは、まさに「文明の衝突」である。私は、フランスで教育を受けたので、旧フランス領の北アフリカの国々の大学で教えていたことがある。モロッコやチュニジアであるが、アルコール飲料については、外国人に対しては、サウジアラビアほどは厳しくない。私はよくワインを飲んでいた。国によりけりなのである。


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■ヨーロッパの対抗措置

カタールで人権が守られていないとして、ドイツやフランスではパブリック・ビューイングを中止する都市も出てきている。

こういう動きに対して、FIFA のジャンニ・インファンティーノ会長は、ヨーロッパのカタール批判は「偽善」だと述べ、「ヨーロッパは道徳的な教えを説く前に、世界中で3000年間やってきたことに対し、これから3000年間謝り続けるべきだ」と反撃した。

移民労働者の人権問題など、ヨーロッパでも多発しており、カタールのことを批判できるはずがないと言うのである。


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■文化摩擦を超えて

舛添要一

このインファンティーノ会長の主張に対して、イギリスやドイツのメディアは「恥ずべきスピーチだ」と批判を強めている。確かに会長の発言は、少し言い過ぎな面もある。

サッカーW杯のようなスポーツイベントが、世界中で安全に楽しく行われるためには、政治性を極力消すことが重要である。オリンピックの表彰台で抗議のジェスチャーをする選手もいたが、これはスポーツには相応しくない。

また、選手も観客も開催地の文化や習慣、生活様式を尊敬し、できるかぎり、それに従う努力をすべきである。そうしないと、スポーツによる平和という理想が叶えられなくなる。今回のカタールW杯の教訓は大きい。

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(文/舛添要一

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