不妊と酒の問題は男性がより深刻か 1日たった1杯でも受精率や着床率が低下
アルコール代謝の過程で産生される活性酸素は、体内のさまざまな組織にダメージを与える。
中国・上海市にある同済大学附属同済医院。ここの不妊治療医師が患者である成人男女2万7,000人を対象に、アルコールやカフェインの摂取状況について聞き取り調査を実施した。
その結果、わずかな飲酒でも受精率や着床率に影響が出るという事実を突き止めたという。『yahoo!sports』『OXFORD ACADEMIC』などが報じている。
■受精と着床とは?
精液内の精子たちは、卵子をめがけて一目散に進み、その周囲を取り囲む。そのうちたった1匹の精子が頭部から出る酵素で卵の殻を溶かし、中に入り込むことができ、その瞬間が「受精」であり、卵子はそこで「受精卵」と化す。
体外受精や顕微授精では、その受精卵を5~7日ほどかけ胚に育ててから女性の子宮内に移植する。子宮内膜に接着し、内膜内にまで侵入すると「着床」の成功だ。
■カフェインよりお酒が影響
今回の調査の責任者である同済医院のリ・ユフェン博士は、「結果として男性の飲酒が不妊にかなり影響を与えることがわかった」と明かす。
「1週間にお酒を約7杯、純アルコールにして84グラム以上を飲む男性は、まったく飲まない男性に比べ受精率が9%も低く、女性だけがお酒を飲む場合では受精率が7%低いことが判明しました」と発表している。なお、カフェインと不妊の関係については摂取量の違いによる影響は確認できなかったという。
■精子の質そのものが低下
リ博士は「アルコールそのものが精子の数を減らします。精子のサイズや形状もさることながら、元気で運動率の高い精子を減少させる影響があるのです」「また、せっかくの受精卵もなかなか着床しない傾向があり、早期流産の確率も高くなることがわかりました」と説明する。
ちなみに2017年、イスラエルの国立エルサレム・ヘブライ大学は「1973年から2011年までの調査で、男性の精子の濃度は最大59パーセントも低下していることがわかった」と発表し、波紋を広げていた。
■怖い酸化ストレス
リ博士はさらに「お酒はタバコと同じように体に毒。飲めばアルコール代謝の過程で活性酸素が産生され、それは体内のさまざまな組織にダメージを与える『酸化ストレス』となります」とも述べた。
また女性においては、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、不妊症、流産の原因となることがわかってきたといい、「自分の体や赤ちゃんのことを考えたら、男性も女性もお酒はきっぱりとあきらめたほうがいいです」とまとめている。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)