ゴッホの『ひまわり』にトマトスープを浴びせ抗議 「芸術と命、どちらが大切?」
今回だけでなく、7月頃から同団体のメンバーが有名絵画に体を接着する事案が相次いでいる。
イギリスを拠点に活動する環境保護団体のメンバーが、ロンドンの美術館でゴッホの作品にトマトスープを投げつけた。生活費の高騰を憂いた若い活動家たちがとった衝撃の行動を、『Mirror』や『The Guardian』などの海外メディアが報じている。
■「芸術と命どちらが大切?」
14日午前11時ごろ、気候変動に反対する団体「ジャスト・ストップ・オイル」のメンバー2人が、ロンドンの国立美術館に現れた。2人はヴィンセント・ヴァン・ゴッホの有名な『ひまわり』の絵の前まで来ると、おもむろにトマトスープが入った缶を取り出し、絵にぶちまけた。さらに接着剤を塗った手を壁につけて跪き、「芸術と命、どちらが大切なのか?」と叫んだ。
活動家たちのこの衝撃的な行動は、周囲の人々に撮影されて瞬く間にインターネット上でシェアされた。動画では2人がトマトスープを投げつけた瞬間に人々が息をのみ、「なんてこった」という心の声が伝わってくるようだ。
■生活費の高騰を象徴
ジャスト・ストップ・オイルは、イギリス政府に石油を含む化石燃料の開発や生産などの承認をただちに停止するよう求める活動を行なっている。ロンドンに現れたメンバー2人の行動は、イギリスで生活費が高騰したことで、多くの家庭がスープの缶を温める余裕もないことを象徴しているという。
2人の活動家は、アンナ・ホランド(20)とフィービー・プラマー(21)と名乗った。彼女たちはトマトが付いて赤く汚れたゴッホの絵の下で、「絵は食べ物より価値があるのか? 正義よりも? 絵画の保護と地球と人間の保護、どちらが大事なのか」「燃料は何百万もの寒くて空腹の家庭には手が届かない。彼らはスープの缶を温める余裕さえないのだ」と無表情で叫び続けた。
■大部分は批判的な声
この動画を見た人々からは、「この動画のせいで、彼女らと一緒に活動したいと思う人を劇的に減らしただろう」「間違ってる。博物館じゃなくて石油産業に直接訴えればいいのに」「生活費の高騰を憂いているのにスープを無駄にするんだね」と、彼女たちの抗議活動に批判的な声が多く寄せられている。
一方で、「おかげで多くの人の注意を惹くことができたと思う」「絵画は苦しむことはないけど、人々は実際に苦しんでいる」と、2人の行動を容認する声も少数派だが見られ、意見が分かれた。
■団体は「抗議やめない」と主張
ゴッホの『ひまわり』は、7,600万ポンド(約124億円)の価値があると推定されている。幸い、フレームに傷がついただけで、ガラス板で保護された絵自体は無傷だったという。
国立美術館に現れた2人の活動家は、警察によって器物損害と不法侵入の容疑で身柄を拘束された。しかしながら、ジャスト・ストップ・オイルは、こうした活動は「犯罪的な政府に対する抵抗」であり、新たな石油・ガスプロジェクトが停止されるまで「やめない」と主張している。多くの人が、アート作品に手をかける抗議活動は今後も続くのではないかと懸念しているようだ。