ヒトラー崇拝の女が釈放決まり論争勃発 「危険思想」は罪になるのか…

ヒトラーを崇拝し、残虐な冗談を言う女性に対して、世間の意見は割れている。

2022/10/16 07:00

刑務所

日本に比べて移民の数が多いヨーロッパでは、人種差別やヘイトクライムに特に敏感だ。イギリスでは、アドルフ・ヒトラーを崇拝する団体に入っていたことで懲役刑を受けた女が、このほど刑期を短縮して釈放されることになった。

『Daily Star』や『Daily Mail Online』など複数の海外メディアでこれが報じられ、人々の間でさまざまな意見が飛び交っている。


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■ミス・ヒトラー参加の女性

アリス・カッター(25)は、非合法化された極右団体「ナショナル・アクション」のメンバーとして、2020年に有罪判決を受けた。

同集団は、白人至上主義やLGBT排斥主義といった極右過激主義思想を持つイギリスの組織で、所属しているだけで最長禁錮10年の実刑判決を受ける可能性がある。

同団体が開催し、ヒトラーを崇拝する女性が参加するというミスコン「ミス・ヒトラー」に出場したこともあるカッターは、当時、3年の刑期を言い渡された。

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■条件付きで早期釈放

カッターの逮捕の決め手となったのは、ナショナル・アクションのメンバーだったことや、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に関する残虐なジョークを日常的に発言していたことなどだった。ところが、わずか26ヶ月の獄中生活の後、条件付きで釈放されることが決定したのだ。

カッターは仮釈放委員会で、自分の行動や考え方が変化し、他人に危険を及ぼす心配はないことを強調した。これを受けて、「門限を守る」「立入禁止区域には入らない」「電子タグを着用する」などといったルールを守ることを条件に、刑期を短縮して釈放が認められることとなった。

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■「投獄する必要があったのか?」の声

この報道を受けて、人々の反応はさまざまに分かれた。「彼女のような病んでいる人は、釈放されるべきではない」「釈放されたら、またすぐにメンバーに復帰するでしょ」と、カッターの釈放を容認できない声がある。

一方で、「彼女はただ無学で、本当に愚かなんだと思う。誰も刺したり轢いたりしていないのに投獄する必要があったのか?」「思想が間違っているという理由で、一部の凶悪犯罪者より長く収監されている」と、逮捕に疑問を呈す声も上がった。


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■「表現の自由」との関係

こうした思想や表現行動に基づく逮捕は、国連の世界人権宣言の19条が保障する「表現の自由」との関係が話題になる。表現の自由が保障されているおかげで、個人や集団は、さまざまなテーマについて自らの信条や思想、意見、感情を、検閲を受けることなく表現できるのだ。

しかし、これは絶対的な権利なのかと問われれば、じつはそうではない。

国連は「ラバト行動計画」という指針を用いて、「特定の国民や人種に対して、差別や暴力を煽動するような発言をすることは法律で禁止すべき」と提唱しており、すべての表現が完全に許されるわけではないことを警告している。


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■人によって異なる捉え方

ナショナル・アクションの活動理念やカッターの発言は、「表現の自由」として認められる範疇を超えていたからこそ、逮捕の対象と見なされたわけである。

実際にはテロ行為や物理的な攻撃を行っていないが、特定の民族を傷つける発言をするカッターのような人を、「そもそも投獄されるべきではなかった」と考えるか、「思想が危険なので釈放すべきではない」と考えるか。人によってその捉え方は異なるようで、終わりの見えない議論が続いている。

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(文/Sirabee 編集部・広江おと

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