世界に衝撃を与えたエリザベス女王の死 英国は今後どういった国を目指すのか
トラス首相はエリザベス女王が亡くなる2日前に会談。トラス氏はインド太平洋を重視して中国との対立は避けられない。
イギリスのエリザベス女王が亡くなり、世界中が悲しみに溢れている。エリザベス女王は70年に渡って即位し、英国の象徴として君臨してきた。
ボリス・ジョンソン氏に変わって新たな英国首相に就任したリズ・トラス新首相は、エリザベス女王が亡くなる2日前に初めて会談した。トラス首相にとっても大きな衝撃となるだけでなく、今後の英国をリードしていこうと強い責任感を感じていることだろう。
■トラス首相による新たな英国
では、今後トラス首相はどういった外交を展開していくのか。まず、トラス首相の政策方針は、2021年3月に発表された国家ビジョン「グローバル・ブリテン」に基づく。
グローバル・ブリテンとは、イギリスが新たにインド太平洋地域に戦略的重心を移し、同盟国や友好国と政治経済的な結びを強化し、インド太平洋地域から形成される新たな秩序作りに関与することを意味する。
■TPPに正式加入の意向
英国は近年、このグローバル・ブリテンを進めている。2021年5月には、南部ポーツマスから出発した最新鋭の空母クイーン・エリザベスを軸とする空母打撃群が、地中海を抜けてインド太平洋地域に展開し、日本や韓国、インドやシンガポールに寄港した。
今後とも日本やインド、オーストラリアなどとの安全保障・軍事面での協力を強化する。また、経済的にもイギリスはインド太平洋に積極的に関与している。
日本やカナダ、オーストラリアなど環太平洋連携協定(TPP)に参加する11か国は同年6月、TPPへの参加を目指すイギリスについて本格的に協議を開始することを全会一致で決定した。当時、国際貿易大臣を務めていたトラス首相は2020年1月、TPPに正式に加入する英国の意思を示している。
■英中との関係悪化の懸念も
トラス首相は上記のように、安全保障と経済の両面でインド太平洋を重視し、日本や米国、オーストラリアやインドとの関係を強化してくるだろう。しかし、そうなれば英国と中国との関係悪化は避けられないだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大を巡る真相解明、香港国家安全維持法などを巡る中国の人権弾圧などを巡り、英国は中国への警戒心を強めている。トラス首相も大臣時代に中国への警戒心を度々示しており、英国の日本や米国との結束は今後さらに強化されるだろう。
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(取材・文/Sirabee 編集部・セレソン 田中)