緊張高まる台湾情勢 中国による軍事的威嚇と懸念される偶発的衝突
中国はすぐに台湾へ軍事侵攻しないだろうが、経済制裁やサイバー攻撃などで威嚇を続ける。しかし偶発的衝突が戦争に発展する可能性も…。
先月はじめ、米国ナンバー3といわれるナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問して以降、台湾を巡る情勢で緊張が高まっている。
それに強い不満を抱く中国は、台湾を取り囲むかのように軍事演習を実施し、台湾もこれまでになく警戒を強めている。では、今後、中国はどう台湾に対応していくのだろうか。
■軍事侵攻に踏み切る可能性
まず、中国が今すぐ軍事侵攻に踏み切る可能性は限りなく低い。
台湾侵攻に踏み切れば、ロシアの二の舞になることは避けられず、欧米や日本からの経済制裁を受けるだけでなく、それによって中国に進出する外資企業の撤退や規模縮小なども出てくる可能性が高く、中国が被る経済的損失は計り知れない。
習政権もそれは織り込み済みで、国際社会からの孤立を恐れる習政権にとっても現時点での台湾侵攻は極めてハードルが高い。
■軍事的手段以外を使うか
しかし、だからといって台湾は安心できる立場にはない。すでに、中国は経済制裁やドローン、サイバー攻撃などで台湾に対して威嚇を続けている。とくに、経済制裁は深刻で、中国は台湾産のパイナップルなど果物3種、高級魚ハタ、柑橘類などの輸入を一方的に停止している。
また、最近では台湾国防部によると、台湾が実効支配する金門島の台湾軍基地付近に中国製のドローンが飛来した。ドローンを飛ばした中国側の意図は分かっていないが、台湾を政治的に威嚇する狙いがあることは間違いない。
そして、数えきれないほどのサイバー攻撃が中国から台湾に向かって行われているとみられ、台湾社会への影響が懸念される。
■偶発的衝突が懸念される
軍事侵攻しなくても、今後も中国による台湾への軍事的威嚇は続くであろう。そこで懸念されるのが偶発的衝突である。
中国に台湾侵攻の意図が現時点で薄くても、台湾軍と中国軍が台湾周辺で偶発的に衝突などすれば、政治的緊張が一気に高まり、中国軍による台湾軍基地への攻撃が実行される恐れがあるだろう。
偶発的衝突によって歯止めが効かなくなる可能性は十分にあり得る。それによって米軍か関与すれば沖縄の米軍基地は間違いなく狙われる。今後も予断を許さない情勢が続くだろう。
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(取材・文/Sirabee 編集部・セレソン 田中)