睡眠不足は人助けの意欲を激減させる? 脳のスキャンで判明した研究結果が話題
睡眠不足の中で命を救う職についている人々は、より注意が必要だ。
よく眠れなかった次の日は、不機嫌になることもあるだろう。睡眠不足は他人に優しくする精神を失わせてしまうということが、実験で証明された。
睡眠の専門家チームによって行われた研究を、『The Guardian』『Daily Mail Online』などの海外メディアが報じている。
■よく寝ている人は他人に寛大
アメリカの研究チームが学術誌『PLOS Biology』に寄稿したところによると、人間はたった1時間の休息を失うだけで、他人を助けたいという気持ちが削がれてしまうという。その対象が、家族や友人であってもだ。
研究チームは、160名の参加者が一晩眠った後に記入したアンケートを用いて、他人を助けたいという意思を調査。参加者はさまざまな場面に対して、「私なら立ち止まって助ける」から「無視する」までの尺度で回答した。
その結果、睡眠をうまく取れていない人のほうが寛大さが極めて低く、他人を助けたいという気持ちが失われていることが分かった。
■睡眠不足の脳は共感力が低下
また別の24人が参加した実験では、被験者が安眠した後と24時間睡眠を取らずに過ごした後の回答を比較。後者の場合に「人を助けたい」という意欲が78%も低下していたという。
MRIで被験者の脳をスキャンすると、他人に共感したり、他人を理解しようとする脳の領域の活動が著しく減退していることが示された。
■睡眠時間減少が問題の現代
研究の著者であるカリフォルニア大学バークレー校のマシュー・ウォーカー教授は、過去50年間に人々の睡眠時間が大幅に減少していることから、慢性的な睡眠不足によって、助け合いの社会形成を困難にしていることを指摘している。
また「医師や看護師、警察官などの職業は重労働のため、十分に睡眠が取れていないことが多い」「こうした状況下では、人を助ける能力が損なわれる可能性がある」と述べ、労働状況の改善を求めた。
■睡眠は心身の健康に不可欠
これまでの研究でも、睡眠不足は高血圧や認知症などの多くの健康問題につながることが示されてきた。しかし身体的な健康だけでなく、他人を助けたいという気持ちまで消えてしまったなら、社会はうまく機能しなくなってしまうだろう。
人々が健康を保ち、互いを助け合うことができる理想的な社会には、十分な休息と睡眠が不可欠だ。
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(文/Sirabee 編集部・広江おと)