安倍元首相を失った日本の将来はどうなる? 外交安全保障の視点から考える
奈良で応援演説の際に銃撃され帰らぬ人となった安倍元首相。外交安全保障の観点から今後の日本はどうなる?
当初、長野県での応援演説を予定していた安倍晋三元首相。急遽予定を変更し、8日朝、真っ先に奈良へ向かい、現地で応援演説を開始した。しかし、演説を開始してから1分が経過した直後、背後から銃撃を受け、残念ながら帰らぬ人となってしまった。
■テロではなく「私的な動機」
現時点で分からないことも多いが、実行犯はある特定の宗教団体と関係する安倍氏に恨みを持ち、それが動機となったと供述している。
本来、学術的な意味でのテロとは政治的な動機に基づく暴力を指すので、私的な動機を犯人が主張する今回の事件は、学術的にはテロに該当しない。
しかし、日本の元首相、しかも選挙中での事件ということもあり、メディアや政治家からはテロという言葉が何回も聞かれる。いずれにせよ、前代未聞の事件だ。
■中国とロシアと独自の関係
周知のように、歴代最長8年8ヶ月にわたって総理大臣を務めた安倍首相。
世界情勢が不安定化する中、日本のリーダーシップを外に発揮するだけでなく、米国でトランプ大統領が誕生して欧州との亀裂が深まる中でも、トランプの唯一の外交的親友となった安倍氏は、うまく日米関係を処理してきた。
安倍氏は総理の職を退いた後も、菅政権、岸田政権を支えるべく政権の外から日本の外交安全保障を支えてきた。この貢献は日本にとって大きな財産であり、今日の岸田首相も真似できるものではない。
■安倍氏を失う日本にとっての意味
昨今、米中対立やウクライナ侵攻、そして岸田政権による米国との結束、ロシアや中国への対抗姿勢もあり、今後日本は中国やロシアの脅威にさらに直面することになる。
そういった時、安倍氏は中国とロシアと独自の関係を作ってきたことから、日本は今日、両国とまともに話せる政治家を失ってしまった。事件後、ウクライナ侵攻を決断したプーチン大統領までも哀悼の意を日本に示しており、日本にとっては大きな外交的マイナスと言っていい。
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(取材・文/Sirabee 編集部・セレソン 田中)