仕事終わりのビールにも危険が…? 医師に聞いた熱中症に潜む「意外なリスク」
すでに熱中症で救急搬送された人も。気になる対策は…。
6月に入り、Tシャツが汗ばむ蒸し暑い日が増えてきた。ジメジメした暑さをうっとうしく思う人も多いだろう。
夏になって注意が必要なのが熱中症だ。じつは、仕事終わりにやりがちな「あの習慣」にも熱中症のリスクが潜んでいて…。
■湿度に注意
10日、大阪市の小学校で体育の授業後に児童17人が熱中症と見られる症状を訴え、1人が救急搬送された。その後、搬送された生徒も含めて全員が回復したというが、この時期、熱中症には十分な警戒が必要だ。
熱中症というと、35度以上など高気温をイメージするかもしれないが、医療法人社団南州会理事長、三浦メディカルクリニック院長の井上哲兵さんは湿度にも注意が必要だと指摘する。
「クールビズが一般的になり、オフィスでは気温28度に設定されることが多いようですが、同じ28度であっても、湿度50%以下と55%以上で室内の快適さはかなり変わってきます。湿度が75%以上になってしまった場合は屋内で直射日光がない場合であっても、暑さ指数が上昇し、熱中症リスクが厳重警戒レベルに到達するため注意が必要です。屋内では、気温管理とともに湿度にも気を配り、気温28度以下かつ湿度50%以下を目指した環境管理が求められます」(井上さん)。
■屋外での対策は…
屋外では、気温や湿度に加えて、輻射熱(ふくしゃねつ)も重要な要素になるという。
「輻射熱とは、日光を直接浴びたときに受ける熱や地面、建物が持っている熱が放熱することで生じる熱のことです。身長が低い子供は輻射熱の影響を強く受けるため、大人以上に水分摂取や温度管理が重要となります。また、屋外は気温・湿度のコントロールができないため、大人でもなるべく物陰を歩いたり、長時間の外出を避けたり、水分摂取をこまめにする必要があります。気温・湿度が高かったり、あまりにも日差しが強い日は、子供の公園遊び、大人のウォーキングなども含めて外出を避けることを検討してください」(前出・井上さん)。
■熱中症が疑われる症状
前出の井上さんに熱中症が疑われる症状について聞くと、熱中症の重症度は軽症・中等症・重症の3段階に分類されると話す。
「軽症はめまいや立ちくらみ、下肢のこむら返り(足がつること)などです。口の中がパサついてくることも一つの目安ですので、経口補水液などでの水分摂取をするとともに、涼しい場所に移動し、ゆっくり休むことが大切です。中等症以上の症状としては、吐き気や嘔吐、頭痛、脱力、体温の上昇、意識障害、ふらついて歩けない、全身の痙攣(けいれん)などが挙げられます。意識障害や痙攣が見られた場合は救急要請すると思いますが、それ以外の中等症以上の症状であっても受診が推奨されていますので、無理に自分達で様子を見ようとせずに受診してください。受診までに時間がかかる場合は、霧吹きを使って露出している肌に水を吹き付けることも有効です」(前出・井上さん)。
■やりがちな「あの習慣」も要注意
予防としてこまめな水分補給が大切だが、熱中症になりやすくなる飲み物もあるという。「アルコールと、カフェインが入っているコーヒーや紅茶・緑茶があげられます。アルコールやカフェインには『利尿作用』という水分を尿として出してしまう作用があり、脱水を助長してしまう可能性が高いため、注意が必要です」(前出・井上さん)。
これからの時期、仕事終わりのビールを楽しみにしている人も多いだろう。ただ、ここにも危険が潜んでいて…。
「夕食時のビールをおいしく飲むために、日中に汗をたくさんかいても水分をなるべく摂らない方がいらっしゃいます。ただでさえ日中の汗で水分が喪失しているのに、アルコール摂取によって、さらに脱水となってしまいます。脱水によって熱中症になる可能性が高くなるだけでなく、血液の過度な濃縮によって脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクが上昇することが分かっています」(前出・井上さん)。
身近なところにも熱中症になる危険が潜んでいるのだ。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人 取材協力/医療法人社団南州会理事長、三浦メディカルクリニック院長・井上哲兵さん)