市場移転から4年、豊洲と築地に「異変」 市場関係者に取材してみると…
築地市場と豊洲市場に足を運んだ。「閉店した店が増えた」という声も…。
「築地市場は閉場しています!」「営業しています!」──。2018年、築地市場から豊洲市場への移転は大きな話題になった。移転をめぐって紆余曲折あったが、あれから4年経った。
現在の築地と豊洲市場に足を運ぶと、「異変」が起きていて…。
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■築地市場はなくなっていない
築地市場は1935年から2018年まで83年間にわたって、公設の卸売市場として使用されていた。18年10月に営業終了し、豊洲市場が開場。
誤解されがちだが、築地市場そのものがなくなったわけではない。仲卸業者や料理人が使う「築地場内市場」が豊洲に移転しただけで、一般の人が食事をしたり、食材を買ったりする「築地場外市場」は変わらず営業している。
コロナによって世の中が一転したが、いま2つの市場はどうなっているのか。5月下旬の朝、豊洲に足を運んだ。
■「見学する人は少ない」
豊洲市場は見学者用と市場関係者用で通路が分かれており、関係者通路には業者らしき人たちがせわしなく行き交っている。市場関係者に話を聞いた。
「築地はエアコンがなくて、夏場はしんどかったけど、こっちはすごく涼しくて天国だよ。ただ、20年に場内で感染者が出たときの雰囲気は最悪だった。『できるだけ違うフロアに行かないように』と接触を避けるよう厳しく言われて…。いまはだいぶ落ち着いてきたけどね」(豊洲市場関係者)。ピリピリした雰囲気のときもあったようだが、現在は活気があるようだ。
一方で、見学者コースにはほとんど人がおらずガラガラ。コロナ禍で、目玉であるマグロ卸の見学も中止になっていた。今年4月25日から一般見学を再開、抽選制のマグロのセリ見学も6月2日より再開したが、すぐに元通りとはいかないようだ。
豊洲の飲食店関係者が明かす。「ゴールデンウイークや土曜日の朝5~6時は多少混みましたが、以前に比べると全然です。飲食店には少しずつ人が戻っていますが、すぐに元通りとはいきませんね…」(豊洲の飲食店関係者)。
記者が飲食店が立ち並ぶコーナーを訪れた際も、牛丼店は業者らしき人たちで満席だったが、寿司店にはほとんど客が入っていなかった。
■「テナント募集」の貼り紙が
豊洲に行った後、築地を訪れた。場外市場には寿司店や屋台のようなお店、海産物を扱う土産物店などが多数並んでいる。
業者の人たちが行き交う豊洲と違って、築地は観光客らしき人たちが見受けられた。一見、にぎわっているように見えるが、やはりコロナの影響は大きかったようだ。
築地の飲食店関係者がため息をつく。「もともと市場が移転してお店を閉めるところも多かったんだけど、この2年で閉店したお店は増えたよ。いまやっているお店も、弁当のテイクアウトを始めたり、ウーバーイーツと契約してなんとか持ちこたえてるんだ。最近はやっとお客さんも増えたけど、売り上げは移転前より格段に下がったよ…」(築地の飲食店関係者)。
実際、シャッターが下ろされて、「テナント募集」の貼り紙が付いているところも多かった。
■豊洲と築地の違いは…
両市場とも少しずつ客足が戻っているとはいえ、完全に回復はできていない。豊洲と築地の両方に足を運んだ印象として、豊洲はマグロのセリ見学で市場の雰囲気を味わいたい人には最適だ。
ただ、基本的には業者の利用がメインのため、いろいろなお店を見て回ったり、食べ歩きをしたい人は築地に行ったほうがいいかもしれない。
1日でも早くコロナが収束して、以前のような活気を取り戻す日が来ることを願いたい。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)