操縦経験なしの乗客がセスナ機を無事着陸させる パイロットが突然の体調不良で…
連絡を受けた管制官が飛行教官だったことは、不幸中の幸いだった。
気圧の変動に慣れているパイロットでも、飛行中の上空で体調不良を起こすことがある。飲酒をすれば酔いが回りやすく、手術跡や傷口は、たとえ古いものであってもうずくという人も。
このたびアメリカで、飛行機を操縦していたパイロットの体調に異変が起きた。人々の命を救ったのは、なんと操縦経験がない乗客だったことを『NEW YORK POST』や『Yahoo!』が報じている。
■目的地まで113km
10日午後、アメリカ・フロリダ州のパーム・ビーチ国際空港に向け、乗客2名を乗せた小型セスナ機がバハマの空港を離陸した。
1名のパイロットが操縦かんを握っていたが、目的地まで北に約113キロメートルというなか、フロリダ州のフォート・ピアス航空管制に「深刻な事態が起こっています」と乗客の声で連絡が入った。
■連絡を受けた管制官は…
「パイロットが支離滅裂で操縦不能です。どうしたらいいか分かりません」と伝えた乗客に対し、連絡を受けた管制官のロバート・モーガンさんは「了解しました」と冷静に応答。「今、どこを飛んでいるか分かりますか?」と尋ねた。
そして「目の前に見えている海岸線は、おそらくフロリダかと…」との回答を得ると、ロバートさんは「では翼を水平に保ち、そのまま海岸沿いを飛んでいてください。すぐに見つけますから」と伝えたという。
■乗客が着陸を成功させる
ロバートさんは、飛行訓練にあたる教官の資格を持っていた。数分後にボカ・ラトン北部を飛んでいる同機を発見すると、目的地に安全に着陸できるよう、飛行機の操縦の仕方、降下の方法を具体的に指示。乗客はそれを注意深く聞き、落ち着いて着陸を実行し、成功させたという。
この件について、航空専門家のジョン・ナンス氏は「飛行経験のない素人が飛行機を着陸させたなんて驚きです。かつて聞いたことがありません」と称賛している。
■詳細は現在も調査中
その飛行機はセスナ 208 キャラバン(Cessna 208 Caravan)で、全長約11メートル、最高時速は341キロメートル。最大14人まで着席可能で、翼幅はなんと16メートルもある。
なお操縦をした乗客やパイロットの名前、および病名やその後の状態などは、プライバシーを重んじるとして明らかにされていない。アメリカ連邦航空局(FAA)は現在も詳細を調査中だという。
・合わせて読みたい→搭乗客の抗議にも動じず 勤務時間外のフライト拒否したパイロットに称賛の声
(文/Sirabee 編集部・桜田 ルイ)