殺虫剤も効かない超迷惑なアリ「クレイジーアント」 有効な菌が発見される
吐き出すギ酸で、ヒアリの毒も無効化する「クレイジーアント」に菌類からの刺客が…。
アメリカで「クレイジーアント」と呼ばれる侵入種のアリに対して有効な菌を発見したと、テキサス大学オースティン校の科学者たちが主張している。『WIO News』『Daily Advent』などの海外メディアが報じた。
■侵入した地域の生態系を破壊
ニランデリアアリの一種であるラズベリークレイジーアントは、過去20年にわたって米国南部の生態系に大混乱を巻き起こしている。あの「ヒアリ」をも超える迷惑アリとして、人々に恐れられているのだ。
このアリには一般的な殺虫剤が効かず、悪食とも言える幅広い食性を持っているため、侵入した地域の昆虫や小さなトカゲなどを一掃し、時には鳥やウサギですらターゲットになるという。
■ヒアリの毒をギ酸で無効化
ラズベリークレイジーアントの侵略スピードは、同じ南アメリカ原産のヒアリよりもゆっくりとされている。しかし、腹部の器官から分泌したギ酸をバリアのように身にまとい、ヒアリの毒を無力化してしまうため、これまでヒアリのテリトリーだった米国南部の多くの地域に進出している。
また、多くのアリが見せる整然とした行進を行わず、フラフラと予想がつかない動きをすることが「クレイジー」という呼び名につながっているようだ。
■感染すると身体の内部から…
全米科学アカデミーの議事録に掲載された調査内容によると、今回発見された微胞子虫(真菌病原体の一種)は、フロリダで採集されたクレイジーアントの体内に巣食っていたという。
この真菌は昆虫の脂肪細胞を乗っ取って胞子工場に変えてしまうというもので、病原体に侵されたアリは腹部が異常に膨らみ、やがて病原体がコロニー中に蔓延していくという。
■クレイジーアント対策に光明
研究チームは、8年間の観察で真菌に感染したアリのコロニーの60%が完全に絶滅したことを確認している。特に感染した働きアリが世話をした幼虫に対して、効果が高いことを突き止めた。
その後、テキサス州で行ったテストでは、州立公園からクレイジーアントの個体数をゼロにすることに成功。この真菌が、クレイジーアントに対する新たな生物的防除になると期待している。
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(文/Sirabee 編集部・びやじま)