詐欺防止ポスターに出現した偉人、何かがおかしい… 「謎の説得力」にツッコミ相次ぐ

とある空港で目撃した詐欺防止のポスター。その内容を受け「お前が言うんかい!」とツッコミの声が寄せられているのだ。

2022/03/09 04:45

■ポスターには「罠」が仕掛けられていた…

ツイート投稿主・道民の人さんは四国が好きで年に数回旅行に訪れており、件のポスターは、高知県にあるその名も「高知龍馬空港」という空港で目撃したもの。

続くツイートで「実際の龍馬はいろいろと暴れん坊だったから、小説とかで美化された人物像より、暴れん坊な姿の方が好き」などなど、龍馬のお金にまつわるエピソードに多数触れている道民の人さんは、ポスターを見た際に「県全体で龍馬を活用している土地なので、このポスターもその一つなのかなあ」と感じたそうだ。

そこで、記者が件のポスターを掲出した高知県の「南国警察署」に詳しい話を聞いてみると、こちらは2013年に掲出されたもので、高知龍馬空港でのみ使用されていることが判明。当時多発していた飛行機を利用しての「現金手渡し詐欺」に対する注意喚起のため、張り出されるようになったという。

続いて、ポスターの内容にツッコミの声が寄せられていることについて触れると、担当者は非常に言いづらそうに「じつはこちらに描かれているのは、坂本龍馬ではございません」と、衝撃のコメントを投下したのだ。

桂浜

龍馬が愛した地として知られる「桂浜」が背景、土佐弁、癖っ毛…といった具合に、龍馬を連想させる要素がふんだんに盛り込まれたデザインだが、よく見るとこちらのポスターには「坂本龍馬」というフレーズは一切使用されていない。

坂本龍馬

とはいえ、担当者自身も「描かれた人物が龍馬に激似」ということは強く実感しているようで、「恐らくポスターを手掛けたデザイナーが龍馬を意識してデザインしたものと思われます」との補足も見られたのだった。


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■「龍馬の借金」は正確でない?

百歩譲って、こちらのポスターに描かれているのが龍馬本人でなかったとしても、「龍馬そっくりの人物」が金銭トラブルに関する注意を喚起している構図に、多少なりともモヤモヤが残ってしまった人もいるだろう。

そこで、続いては高知県の「高知県立坂本龍馬記念館」に、今回話題となったツイートにも記されていた「福井藩からの借金」について詳しい話を聞いてみることに。

高知県立坂本龍馬記念館

同館の学芸担当チーフは「龍馬の借金」というフレーズに違和感を覚えたようで「本件に関しましては、資料が非常に少なく、詳細不明な点もございます」と前置きしつつ、「勝海舟の日記には『海軍教授之事ニ費用不備、助力を乞ハむ為成』という表記がございますので、私塾の海軍塾=勝塾への資金提供のように読み取れます」と、一つの資料を例に挙げて背景を推測する。

しかし、福井藩士・中根雪江による『枢密備忘』内では、神戸村に海軍所を創建することについて書かれており、こちらの海軍所(恐らく神戸海軍操練所のこと)の建設資金を供出すると捉えていたようで、そうなってくると件のお金は「幕府の公的事業への援助」と考えられるのだ。

また『横井小楠遺稿篇』という資料では「千両程奉願度念願と龍馬申出候」とあり、お金の動きが「拝借」と書かれているなど、いずれの表記が正確なのか判断するには、情報が不足している。

高知県立坂本龍馬記念館

担当者は「いずれにしましても、松平春嶽と勝の間では、通常の事務ルートによって資金提供の話はついていたのではないか、という説が吉田健氏の著書『文久三年の龍馬と福井藩』で指摘されています」「そうすると、受け取りに行ったのが龍馬、というだけの話になります」とも補足していたのだ。

そうした背景を受けて「福井藩側は『幕府の公的事業に資金を提供する』という考えですので、もし返済を求めるのならば、相手は幕府ということになります」「しかし『海舟日記』の記載のように、個人の開く私塾への資金提供だとすれば、返済を求める相手は勝ということになります」とコメントを寄せ、決して「龍馬の借金」ではないと強調している。

こうして龍馬の冤罪(?)は晴れたワケだが、借りたのが幕府であれ、勝個人であれ、結局福井藩は数千両もの大金を回収できていないのでは…。思わず福井藩に同情しそうになったが、じつはこちらの「貸金問題」は、140年の時を超えて驚きの結末を迎えていたのだ。

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■140年後の福井市で思わず感動…