石原慎太郎・元都知事が死去 田中康夫知事誕生を予言など作家の感性活かす
運輸相・東京都知事などを務めた石原慎太郎さんが死去。取材記者が見たエピソードとは…。
■橋下徹氏をヒトラーになぞらえた真意
最近、菅直人氏が橋下徹氏や日本維新の会をヒトラーになぞらえたことで、過去に石原さんが橋下氏を「若い頃のヒトラーに似ている」と日本記者クラブで述べた部分が話題になっているが、哀しいことに維新批判者も「演説を褒めてもらった」と述べる。
橋下氏も真意を理解しておらず、残念でならない。石原さんはヒトラーや彼が台頭した時代背景に深い関心を持ち、関連の資料を熟読し、ナチスドイツ下での在独大使だった人から話を聞いていた。
その上で「ユダヤ人にバカなことをした」とホロコーストを批判した上で、「ヒトラーに該当する政治家だ、橋下徹は」と氏なりの最大限の褒め言葉をおくった。橋下氏に心酔しきった上での発言だったのは明らかだ。
橋下氏が衆議院議員の江田憲司氏率いる「結いの党」と合併するとき、石原さんは捨てられ、合流させてもらえなかった。平沼赳夫氏と臨んだ会見で心酔していた橋下氏に見限られ、後悔の念を語った姿が今も忘れられない。
■石原さんの次代への言葉
2012年の総選挙で「日本維新の会」代表として臨んだ石原さんは、高齢をおして再び政界に挑戦する理由を次の歌をよんで説明した。
「かくまでも 醜き国に なりたれば 捧げし人の ただに惜しまる」
ツレアイを特攻で亡くした戦争未亡人のこの歌を靖国神社で聞いた石原さんは、国を憂う気持ちから立ちあがったのだと説明。
石原さんは、維新の同志たちや有権者たちに「次の福沢諭吉の言葉だけは覚えて帰ってください」と述べ、毎回演説を終えた(福沢諭吉の言葉を慎太郎風にかみ砕いているので、一言一句合った引用でないことは付記しておく)。
「立国は公にあらず。私(わたくし)なり」 国を憂い思うことは、一番大切な私事だと解説した。政治が遠く、関係のないことだと思う日本人に対する警句だろう。
そして、 「独立の心なき者、国を思うこと深切ならず」 深切については「切々として本気で物事を考える」ことと解説した。有り体にいえば、人や組織に依らず自ら国を思え、ということだろう。
石原さんを取材してきた者として言うと、氏の話は聞かせるものが多かった。勉強になった。この国の行く先を思う憂国の士がまた一人亡くなられたことをただ哀しく思うと同時に、国を憂う気持ちを継いでいきたい。
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(取材・文/France10・及川健二)