本人の決意ひとつで迅速な安楽死が実現? スイス企業が自殺ほう助カプセルを開発
カプセルに入れば完全にシャットアウト。愛する人々に手を握りしめられながら…という形ではないようだ。
身体機能が衰え、やがて寝たきりになってしまう重い神経難病や、治療するにも大変つらい副作用が伴い、激しい痛みが予想されるガンなど、重い病に侵された人が選ぶことがある「安楽死」の道。
このほどスイスで、自殺ほう助の新技術を持つマシンが誕生した。『SWISS INFO』『Futurism/NEOSCOPE』など海外のメディアが報じている。
■フォルムは近未来の棺?
スイスのエグジット・インターナショナル(Exit International)という企業が、死を強く望む人々の願いをかなえたいとして、『Sarco』というカプセル型の自殺ほう助マシンを誕生させた。
3Dプリンタの技術を駆使したそのマシンは、近未来の「棺」を思わせる斬新なデザインで、なだらかな曲線を描くスマートなフォルム。3機目を製造し、ついに完成に至ったとしている。
■自殺やほう助に理解あるスイス
このマシンを自殺ほう助に使用することで、法的な問題が生じる可能性がある。
それについてエグジット・インターナショナルの創設者で、開発責任者でもあるフィリップ・ニッチカ博士は、「然るべき組織から『問題なし』というお墨付きを、昨年のうちにもらってある」と説明している。
自死であっても、安らかに天に召される尊厳ある死と理解し、自殺ほう助を合法とみなす国が海外にはいくつかあるが、なかでもスイスは35年以上の歴史を誇る自殺ほう助の先進国だ。
■規制薬物は用いない
スイスの自殺ほう助団体で、特に有名なのは『エグジット(EXIT)』と『ディグニタス(Dignitas)』。昨年1年間で計1,300人ほどが利用したと報告され、後者は海外からの希望者も受け入れることでも有名だ。
両団体とも、過剰投与で動物を安楽死させる規制薬物の『ペントバルビタールナトリウム』を使用するため、倫理上の問題点を指摘する向きがある。そのため、ニッチカ博士は規制薬物を用いない方法にこだわったという。
■台座から窒素が
Sarcoの自殺ほう助で使用されるのは、規制薬物ではなく窒素だ。カプセルが設置されている台座には窒素が充填されており、スイッチが入るとカプセル内の酸素レベルは約30秒で21%から1%へと低下する。
人の意識は混乱し、失われ、低酸素症、低炭酸ガス血症の状態のまま、パニックや窒息感に苦しむことなく5〜10分後には死が訪れるそうだ。
また自殺教唆や故殺などを防ぐため、カプセルの内部に横たわるといくつかの質問が示される。自身の意思で答え、真に死を望んでいると判断された場合のみ、次のステップに進めるそうだ。
ただし、このカプセルに入れば、完全にシャットアウトされてしまう。愛する人々に手を握りしめられ、体をさすってもらい、やさしい声を掛けられながら逝く…という温かみだけは望めないようだ。