不快な民間療法を薦めるインドの医師 「安産には牛の排泄物を食べなさい」
大腸菌ほかの菌により重い感染症を引き起こし、死亡する例が後を絶たないという。
さまざまな民間療法や健康法が存在するインド。子作り・安産の祈願、風邪からガンの治療まで、高齢者ほど古くから地域に伝わる独特な方法を信じる傾向にある。
そんななか、中年の男性医師が驚くようなものを「食べなさい」と動画で呼びかけ、波紋を広げている。同国の『Indian Express』やイギリスの『Mirror』などが報じた。
■医師が驚きの民間療法を…
インド・ハリヤナ州カルナル県のマジョジ・ミタルさんという医学博士が、このほどある民間療法について動画を自作し、自信たっぷりのデモンストレーションを行った。
「牛の排泄物は万能の健康効果があり、私の兄弟姉妹はみんなそのおかげで健康に育ちました。現在、私の家族も全員がそれを飲んで、食べています」と話し、ミタル医師は実際に自分の口に入れて見せた。
■「私の母親の場合…」と医師
ミタル医師が特に効果があると強調したのは、出産に対してだ。「牛の排泄物を飲んで食べると、妊娠は順調に経過し、帝王切開にはならないんです。それを励行していた私の母は、9人の子がすべて自然出産かつ安産でした」と自信たっぷりだ。
「牛から得られるパンチャガヴィア(Panchagavya)の効果は、すべての人類にとって絶大なものです。体内の不純物を取り除いてくれるので、心も清らかになります」と話している。
■牛の排泄物は金の生る木
インドには昔から牛糞、尿、および牛乳をベースに作られた「パンチャガヴィヤ」を飲むという民間療法が存在し、それでガンまで治ると信じている人が高齢者を中心に存在する。
また、マディヤプラデーシュ州の州知事は、「牛の排泄物は無限の可能性を秘めている。
経済の発展をもたらすような使用方法を模索したい」と発言しており、チャッティースガル州では牛糞を用いた発電プロジェクトが立ち上げられた。ひどく臭いにもかかわらず、金の生る木らしい。
■「新型コロナも死滅」は完全なデマ
しかし、一時期出回った「牛の糞で新型コロナウイルスが死滅する」という情報は、まったくのデマに終わった。多くの国民は、すでにその奇妙な民間療法を信じていないという。
アーメダバード医師会のヴァサント・パテル博士は、免疫力をアップさせるという科学的な根拠がないばかりか、大腸菌ほかの菌で重い感染症を起こして死亡する例が後を絶たないとし、パンチャガヴィヤを徹底批判。
「エネルギー、農作物の肥料や農薬に使用されるのが精一杯だ」と述べている。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)