優秀な外科医が無念のコロナ死 ワクチン接種2回目から8ヶ月後に感染
皮肉にも、何ヶ月ぶりかに家族に囲まれて過ごせたのは闘病の最終日、つまり臨終の場だった。
新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、その直後は安心感に包まれるも、月日の経過とともに直面するのが、ワクチンで得られた抗体値はいつまでも続くものではない、免疫獲得の程度には個人差もあるという現実だ。
医療従事者の皆さんの「3回目の接種を早く」と望む声は、特に切実なものがあるといわれるが…。
■凄腕外科医がコロナで死亡
イギリスで今、ヒーローのような存在だったベテラン外科医が、11月14日、無念にも新型コロナウイルス感染症で亡くなったという話題が人々を涙させている。
同国の『Mail Online』『The Sun』などが報じたところによれば、死亡したのはスウィンドンにあるグレートウエスタン病院・集中治療室(ICU)に勤務していたイルファーン・ハリム医師(45)。
年間平均1,200件、これまで計25万件もの手術を行った経験を持つ凄腕の外科医で、誰からも信頼されていた。その死は病院にとっても大変な損失だという。
■追加接種のわずか数日前に…
ハリム医師が2回目のワクチン接種を済ませたのは今年1月のこと。それから半年以上が経過し、9月中旬にやっとブースターショット(追加接種)の予定が組まれたというのに、そのわずか数日前の9月10日に体調を崩した。
その後の検査で新型コロナウイルスに感染していることが判明。ハリム医師の症状はみるみる悪化し、重症化したためロンドンのロイヤル・ブロンプトン病院に転院したが、約9週間の病との戦いに敗れてしまったという。
■仕事熱心で飲酒喫煙もせず
ハリム医師は、家庭では妻のサイラさんとともに4人の子供を育てていた。一番下の子はまだ5歳だが、新型コロナのパンデミックのせいで彼は病院に寝泊まりしており、自宅に戻れない状態が何カ月も続いていたそうだ。
メディアの取材に「喫煙も飲酒もせず、日夜患者さんの命を救うため熱心にICUで働いていた医師がなぜ…それが悔しくてなりません。夫は追加接種を早くと切望していました。犠牲者をこれ以上出さないようお願いしたいです」とサイラさんは涙ながらに訴えている。
■何ヶ月ぶりで家族と会えたが…
皮肉なことに、家族が何カ月ぶりかにハリム医師と再会できたのは、闘病の最終日、つまり臨終の場だった。「私は夫を腕に抱き、祈りと愛をささやきました」と話すサイラさん。家族を近づけてはならない孤独な闘病生活は、新型コロナ患者の特徴だ。
素晴らしい夫、父、そして老いた親にとっては自慢の息子であったというハリム医師。ヒーローを亡くした喪失感、空虚感をどう乗り越えていけばよいか、家族の誰もが苦しんでいるという。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)