「希望したものと別の薬を投与された」 新型コロナ重症化した女性が病院を提訴
「患者や家族に、医師に特定の治療薬を使用するよう求める権利はないのか」と家族は納得がいかない様子だ。
新型コロナウイルス感染症の治療方法は、確立しているとはまだ言えない。薬の開発や投与の試行錯誤が続くなか、本人や配偶者が「話題の薬をぜひ試して」と強く望んだ場合、その意思は優先されるべきなのだろうか。
アメリカ・フロリダ州で、重症化してしまった女性患者の家族が裁判を起こしたことを、地元メディアの『WPTV/WEST PALM BEACH』などが伝えている。
■家族の願いも虚しく…
アメリカ・フロリダ州パームビーチ郡のロクサハッチーという町で12日、幼稚園や小学校で長いこと教諭として働いていたタマラ・ドロックさんという47歳の女性が、新型コロナウイルス感染症の重症化により死亡した。
夫のライアン・ドロックさん、14歳の娘エミリーさん、そして12歳の息子パーカーくんは今、深い悲しみとともに打ちひしがれている。
■「イベルメクチンを試したい」
タマラさんは今年8月に新型コロナウイルスに感染し、症状が重いことからパームビーチ・ガーデンズ医療センターの集中治療室に運ばれた。
彼女と夫のライアン・ドロックさんは、当時注目を集めていた寄生虫駆除薬のイベルメクチンで治療してほしいと訴えたが、医師は拒否。レムデシビル、ステロイド、中和抗体薬による治療を行った。
9月、タマラさんの症状はみるみる悪化し、気管挿管型の人工呼吸器を装着。ライアンさんは「あのときイベルメクチンさえ投与されていれば」として、10月に病院側を提訴した。
■危険な判例を作るわけには…
だが、パームビーチ郡巡回裁判所の判事はライアンさんの訴えを棄却。
米国食品医薬品局(FDA)と米国疾病予防管理センター(CDC)は、新型コロナウイルスへのイベルメクチン製剤の使用を奨励しておらず、治験もごく限られた病院でしか行われないことが理由だった。
「患者や家族に、特定の薬を使用するよう医師に求める権利はない。医療上の裁判に危険な判例を作らないためにも、医師の治療方針に反対する権利を安易に認めるわけにはいかない」と述べたという。
■不服申し立てを行う
同じいら立ちを抱えている患者や家族は他にも大勢いるとして、ライアンさん側はこれに不服申立てを行った。
担当する弁護士は「希望した薬を投与して重症化していたなら、本人や家族もまだ納得がいく。患者の側にも選択の自由が認められるべきだ」と主張。何としても法廷に持ち込みたいという。
なお、12週間にも及ぶ入院と治療で高額になってしまったタマラさんの医療費について、家族の知人がクラウドファンディングの『GoFundMe』にページを開設。寄付を呼び掛けたところ、日本円にして約120万円以上が集まっている。
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(文/Sirabee 編集部・浅野 ナオミ)