アルツハイマーと闘う妻のため 80代男性がスコットランド282峰の全頂制覇に挑戦
「これが病身の妻のために自分ができるたった1つのこと。いつか終わりがくるとわかっていますが…」と男性。
愛妻が、2018年にアルツハイマー型認知症と診断。病状が徐々に進行していく様子を黙って見守るしかないことが、あまりにもつらかったという男性がいる。
そして病床の妻のため、81歳の自分自身に大きな課題を掲げて努力していることを、『euronews』『Inside Edition』などの海外メディアが報じた。
■妻が24時間介護が必要に
スコットランドの北部となるハイランド地方に暮らす、ニック・ガードナーさん。50代のとき、長年連れ添った愛妻のジャネットさんとともに、イングランドの片田舎から引っ越してきたという。
しかし2018年にジャネットさんはアルツハイマー型認知症と診断され、骨粗しょう症もあるため24時間介護が必要な状態になってしまった。妻のために健康な自分にできることは何か思案していたニックさんは、「2つの壮大な計画」を思い立ったという。
■夢の実現に向けSNSにも挑戦
細身のニックさんは今、とにかく体力を維持することを意識し、まだ挑戦したことがないスコットランドの山に登る日々を送っている。目標はなんと「282峰ある国内の山を全頂制覇すること」だそうだ。
さらに、少し前にはFacebookとInstagramの使い方も教わり、自身のアカウントを開設。登山中に出会う動植物、美しい景観、山頂制覇の瞬間などを撮影してはページに写真を投稿し、その時々の想いを書き残している。
■「山に登るたび童心に帰る」
特に多くの人が感銘を受けたのは、グレンコー渓谷に位置する標高1,022メートルのブアチャイール・エティーブ・モルを制覇したニックさんの姿だ。
すでに寒さは厳しく、強い風にさらされながらも湖や谷底の美しい眺めを堪能するニックさんは、「とても清々しく最高の気分です。山に登る度に私の心は少年の頃に戻ったかのように、いまだにワクワク興奮するのです」とつづっている。
■募金活動は順調
Facebookでは、人々に寄付金の協力をお願いしているニックさん。かつてあまり関心がなかったSNSに挑戦したのも、「壮大な計画」の1つを果たすためだった。
登山仲間がどんどん情報を広めてくれたおかげで、目標額の4万ポンド(日本円にして615万円)のうち、とんとん拍子に3万ポンド(461万円)を超える額が集まった。
そのお金は、すべて『アルツハイマー・スコットランド』『王立骨粗しょう症協会』など医療研究機関に贈られるという。
■171峰を制覇
メディアのインタビューを受け、「これは病身の妻のために自分ができるたった1つのチャレンジです。いつか終わりがくることはわかっていますが…」と話すニックさん。ここまで制覇したのは171峰だそうだ。
大好きな登山でたくさんのお金を集め、それをアルツハイマーや骨粗しょう症の研究に役立ててもらいたいと始めたチャレンジ。しかし、それが自分の生きる証にもなっていると感じているそうだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)