「ファイザー製ワクチンは劣るとの落胆不要」 対デルタ株効果の新情報が続々【後編】
ファイザー製とモデルナ製で違うmRNAの含有量。「弱めのものを複数回が安心」という考え方も…?
世界で猛威を振るう新型コロナウイルスに対抗するための最善策は、現時点ではワクチン接種だ。しかし、「ファイザー製ワクチンの対デルタ株の予防効果はかなり低下」という報道が相次ぎ、同ワクチンを打った人たちの間で落胆や動揺がみられるという報道もある。
ところがここにきて、それを覆すような調査研究の結果が続々と発表されているようだ。前編に続き紹介する。
■「そもそも含有量が異なる」
オーストラリアの学術系ウェブサイト『The Conversation』は、同国で新たにモデルナ製ワクチンが承認されたことを受け、ファイザー製とモデルナ製の違いに関する記事を10日に掲載した。
そこには、「両者においてはmRNAの含有量が異なる。ファイザー製は30マイクログラム、モデルナ製はその3倍以上の100マイクログラムだ」と示されている。
副反応がファイザー製より若干強く、投与の間隔により多い4週間を要し、対象が18歳以上(ファイザー製は12歳以上)となっているのも、含有量の差のせいだという。なおファイザー社は、11歳以下の子供を対象に、より少ない量での臨床試験を海外で進めている。
■ファイザー製は優秀
16日、ミズーリ州のセントルイス・ワシントン大学医学部の研究チームが、免疫学の査読付き医学誌『イミュニティ(Immunity)』に興味深い論文を発表した。
モデルナ製に比べ成分の含有量が少ない、効果が低下しやすいと「劣勢」が伝えられるファイザー製ワクチンだが、それが人間の体内に作り出す13種類の抗体で、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4種の変異株に十分に対抗できるとまとめられた。
重症化や入院を防ぐ効果が93%を維持しているファイザー製は、やはり高く評価されるべきだという。
■ファイザー社の最新の発表
先述の『The Conversation』による質疑応答には、分子科学と遺伝子転写に詳しい西オーストラリア大学のアーチャ・フォックス准教授と、オーストラリア国立大学で分子生物学が専門のトーマス・プライス博士が対応している。
「How long does the immunity last?(その免疫はどれくらい続くの?)」という問いに対しては、「6ヶ月後の感染予防効果について、モデルナ社は93%、ファイザー社は 84%を維持している」との回答が示された。
後者はファイザー社が7月下旬に発表した情報であり、そこには「接種後2ヶ月以内の感染予防効果は96%、その後に低下するが、6ヶ月後にも84%だ」とある。
■追加接種政策に「待った」
予防効果を確実に上げたいとするファイザー社は、ブースターショット(3回目となる追加接種)に向け生産を加速。追加接種により、デルタ株に対する抗体が18〜55歳の人では5倍に、65〜85歳の人では11倍になることが治験でわかったと発表している。
だが、貧しい国がワクチン接種で後れを取っていることから、世界保健機関(WHO)は先進国がブースターショットで再びワクチンを独占することを強く批判。国ごとに接種率の偏りが激しいうちは、地球規模でのパンデミックの収束は、遠い先の話になるだろうという。
ラムダ株の今後の展開にも大きな注目が集まっており、ワクチンの争奪戦はますます厳しさを増すことが予想される。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)